私たち人間は、生まれた瞬間から「生きるための仕組み」を持って生まれてきます。そのひとつが**原始反射(primitive reflex)**と呼ばれるものです。原始反射は、新生児や乳児の成長過程で自然に現れる、自分の意思ではコントロールできない反射的な動きのことを指します。
原始反射の役割
原始反射は、赤ちゃんがまだ脳の発達が未熟な時期に、命を守り、生きる力を支える仕組みとして働きます。
たとえば、母乳を吸うための「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」や、危険を感じたときに手足を大きく広げる「モロー反射」などがあります。
これらの反射は成長に合わせて次第に消失し、代わりに**意思をもった運動(随意運動)**へと切り替わっていきます。
主な原始反射の種類
• モロー反射
大きな音や強い刺激に驚くと、両腕を大きく広げてから抱きつくように戻す反応。生後4か月ごろまでに消失。
• 吸啜反射
口に触れたものを吸おうとする反応。授乳のために欠かせない反射。
• 探索反射(ルーティング反射)
頬や口の周りを触れると、そちらに顔を向けて口を開く反応。母乳や哺乳瓶を探すために必要。
• 把握反射
手に触れたものを強く握りしめる反応。足にも同様の反射があり、立つ準備につながる。
• 非対称性緊張性頸反射(ATNR)
首を横に向けると、顔の向きと同じ側の手足が伸び、反対側が曲がる反応。「フェンシングの姿勢」とも呼ばれる。
発達との関わり
原始反射は通常、生後数か月〜1年以内に消失していきます。これは、脳が成熟し、自分の意思で体を動かせるようになる過程を意味しています。
しかし、発達に何らかの遅れや特性がある場合、反射が長く残ってしまうことがあります。その場合、姿勢の崩れや集中力の持続のしにくさ、学習への影響などが見られることもあります。
支援の現場での視点
福祉や療育の現場では、「原始反射が残っているかどうか」は支援方法を考える上での重要なヒントになります。
• 動きづらさの背景を理解する
• 感覚統合やリハビリの視点を取り入れる
• 遊びや運動を通じて、反射の統合を促す
こうした視点をもつことで、子ども一人ひとりの発達をより丁寧にサポートすることができます。
まとめ
原始反射は赤ちゃんが生きるために備わった大切な仕組みです。
成長とともに自然に消えていきますが、発達の過程で残存する場合は、生活や学習に影響することもあります。支援者や保護者が「反射」という体のサインを理解しておくことは、その子に合った関わりを見つける大きな手がかりになります。
次回は「①原始反射が残っているときに見られるサイン」と「②家庭でできる関わり方」について紹介します!
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