前回の記事で紹介したように、防衛機制は 心を守るために無意識に働く心理的な仕組み です。
しかし、防衛機制に頼りすぎてしまうと、問題に向き合えなかったり、人間関係でトラブルを生んだりすることがあります。
今回は、防衛機制をうまく活かしつつ、偏りすぎないための工夫について紹介します。
防衛機制を「活かす」とは?
防衛機制は悪いものではなく、むしろ 生きるための知恵 ともいえます。
例えば、辛い出来事をすぐに受け入れるのは難しいものです。そんなとき「否認」が働くことで、心の準備が整うまで時間を稼ぐことができます。
また、「昇華」のように、怒りや不安をスポーツや芸術活動に変えることは、ストレス解消や自己成長につながります。
つまり、防衛機制は「敵」ではなく、上手に使えば心を助けてくれる味方なのです。
偏りすぎるとどうなる?
一方で、特定の防衛機制に偏りすぎると、生活に支障が出ることもあります。
• 否認ばかり → 問題を直視できず、解決が遅れる
• 投影ばかり → 人間関係が悪化しやすい
• 退行ばかり → 自立が難しくなる
• 知性化ばかり → 感情を感じにくくなり、人との共感が弱まる
このように、どんな防衛機制も「過剰」になると心のバランスを崩してしまうのです。
偏りすぎないための工夫
では、どうすれば防衛機制を「うまく」活かせるのでしょうか。
ここでは日常生活で取り入れやすい工夫を紹介します。
1. 自分の感情を言葉にしてみる
「本当は今、私は何を感じているんだろう?」と立ち止まってみること。
否認や知性化に偏っていると、自分の感情が見えにくくなります。ノートや日記に書き出すのも効果的です。
2. 信頼できる人に話す
投影や退行は、無意識のうちに他人に影響を及ぼします。
安心できる友人や専門家に気持ちを話すことで、防衛機制をやわらげ、現実を受け止めやすくなります。
3. 「昇華」を意識する
強い感情を「社会的に良い方向」に変えることを心がけましょう。
・イライラしたら運動する
・不安があるときは絵や音楽で表現する
これらは健全なストレス解消になり、防衛機制を前向きに活かせる方法です。
4. バランスを大切にする
「防衛機制=使わないほうがいい」ではありません。
大切なのは 偏らず、いくつかを柔軟に使えること。
時には「否認」で心を守り、時には「昇華」でエネルギーを活かす。そうした切り替えができると、心が柔軟になります。
福祉や援助の現場での視点
福祉の現場では、利用者さんや家族が防衛機制を働かせていることがあります。
例えば、病気や障害を受け入れられず「否認」しているとき、それは 心を守ろうとしている大切な時間 です。
援助者側も「なぜこの人は否認するのか」ではなく、「心を守るために必要な反応なんだ」と理解しながら支えることが大切です。
まとめ
防衛機制は、心を守るために誰もが持っている自然な仕組みです。
ポイントは、
• 活かす視点を持つこと
• 偏らないように意識すること
• 感情を言葉や行動で整理すること
これらを意識するだけで、ストレスに強く、しなやかな心を育てることができます。
次回の記事では、「よく使われる防衛機制のパターンと自己チェック方法」を紹介します!