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  • てんかんとともに働く・学ぶために

    職場や学校での支援のポイント

    1. てんかんのある人が安心できる環境づくり

    てんかんは多くの場合、薬でコントロールできる病気です。本人が安心して力を発揮するためには、周囲の理解と配慮が欠かせません。

    「発作は突然起きることがある」ことを前提に、あらかじめ対応を共有しておくことが安心につながります。


    2. 学校での支援の工夫

    発作時の対応をマニュアル化する

     担任や保健室の先生だけでなく、周囲の児童生徒やクラスメイトにも「発作があったときは慌てず見守る」ことを伝えておく。

    体調管理をサポートする

     睡眠不足やストレスは発作の引き金になるため、無理のない学習環境を整える。テストや行事の前は休憩を取りやすくするなど柔軟な対応が大切。

    参加の機会を広げる

    体育や校外学習も、危険がなければできる限り参加させる。過剰に制限するのではなく、安全を確保した上でチャレンジできるようにすることが本人の自信につながります。


    3. 職場での支援の工夫

    発作への理解を共有する

     直属の上司や同僚に「発作が起きた場合の対応」を伝えておくと安心。職場の安全管理の一環として事前に共有しておくとスムーズです。

    勤務環境の調整

     夜勤や極端な残業は発作を誘発することがあるため、勤務シフトの配慮が必要になる場合があります。

    本人の強みを活かす

    てんかんがあるからといって、業務能力が制限されるわけではありません。むしろ、集中力や責任感を発揮して活躍する方も多くいます。仕事内容を制限するのではなく、本人の得意を伸ばせる配置を意識することが大切です。


    4. 周囲の人ができること

    • 発作があっても「怖がらない・特別視しすぎない」

    • 正しい対応を知って「安心して支えられる人」になる

    • 偏見や誤解を減らし、自然に一緒に過ごせる環境をつくる

    これらの姿勢が、本人にとって大きな安心と自信になります。


    5. まとめ

    てんかんは「支援があれば十分に学び・働ける病気」です。

    学校や職場で周囲が正しい知識を持ち、安心して力を発揮できる環境を整えることが、本人だけでなく組織全体の成長にもつながります。

    「理解と安心のある場」をつくることが、社会全体にとっての大切な一歩です。

  • てんかん発作とは?知っておきたい基礎知識と日常での関わり方

    1. てんかんってどんな病気?

    てんかんは、脳の神経が一時的に異常な電気活動を起こすことで発作が繰り返される病気です。世界人口のおよそ1%に見られるといわれ、決して珍しい病気ではありません。

    「発作=倒れる」というイメージを持つ方も多いですが、実際には発作のタイプはさまざまで、数秒間ぼーっとするだけの軽いものから、全身が硬直したりけいれんしたりするものまで幅があります。


    2. てんかん発作の主な種類

    てんかん発作は大きく「部分発作」と「全般発作」に分けられます。

    部分発作(焦点発作)

     脳の一部分で異常が起きる発作。意識があるまま体の一部がピクピクすることもあれば、短時間意識がぼんやりすることもあります。

    全般発作

    脳全体に異常が広がる発作。突然倒れて全身が硬直・けいれんする「強直間代発作」や、数秒間意識が飛ぶ「欠神発作」などがあります。

    発作の見え方が人によって大きく異なるため、「てんかん=こういう症状」と一概には言えません。


    3. 発作が起きたときの対応

    てんかん発作は突然起こることがありますが、正しい対応を知っていれば落ち着いて行動できます。

    • あわてず、安全を確保する(周囲の危険物をどける)

    • 無理に体を押さえつけない

    • 口に物を入れない(舌を噛むのを防ぐために物を入れるのは危険)

    • 発作の時間を測る(5分以上続く場合は救急要請)

    • 発作が収まったら横向きにして呼吸を確保する

    ほとんどの場合、発作は数分以内で自然に治まります。大切なのは「見守り」と「安全の確保」です。


    4. 治療と日常生活

    てんかんは薬による治療で多くの場合コントロールが可能です。発作が安定していれば学校や職場、スポーツ、旅行などもふつうに楽しめます。

    ただし、睡眠不足や飲酒、強いストレスなどが発作のきっかけになることがあるため、生活リズムを整えることが大切です。


    5. 偏見をなくして支え合う社会へ

    「てんかん」という言葉にまだ偏見や誤解が残っているのも現実です。しかし正しい知識を知れば、「怖い病気」ではなく「コントロールできる病気」だと理解できます。

    周囲の人が発作への対応を知り、安心して過ごせる環境を整えることは、本人にとっても大きな力になります。


    まとめ

    てんかんは誰にでも起こり得る病気で、正しい対応を知っていれば安心です。もし身近で発作が起きても、落ち着いて「安全を守る」ことを意識してください。そして、偏見ではなく理解とサポートで支えていける社会を目指していきましょう。


    次回は 「職場や学校でのてんかんのある人への支援方法」 に焦点をあてた続編の記事を用意しました。

    (さらに…)
  • 高次脳機能障害とは?症状・原因・支援のポイントを解説

    「事故や病気のあと、性格が変わった」「仕事や生活がうまくいかなくなった」――。こうした背景にあるのが、高次脳機能障害です。

    今回は、医療や福祉の現場でも注目されている高次脳機能障害について、その特徴や支援のあり方を紹介します。


    1. 高次脳機能障害とは

    高次脳機能障害とは、事故や病気による脳の損傷が原因で、記憶や注意、感情のコントロールなどに障害が生じる状態を指します。

    主な原因:

    • 脳外傷(交通事故・転落などによる頭部外傷)

    • 脳血管障害(脳出血・脳梗塞など)

    • 脳炎・脳腫瘍 など

    身体的な麻痺が目立たない場合も多く、「外見ではわかりにくい障害」として、周囲の理解を得にくい特徴があります。


    2. 主な症状

    高次脳機能障害の症状は多様で、人によって現れ方が異なります。代表的なものを挙げると:

    • 記憶障害:新しいことを覚えられない、予定を忘れてしまう

    • 注意障害:集中力が続かない、同時に複数のことができない

    • 遂行機能障害:計画を立てて行動することが苦手、段取りができない

    • 社会的行動障害:感情のコントロールが難しい、場に合わない発言や行動をしてしまう

    • 失語・失行・失認:言葉が出にくい、動作の手順がわからない、認識が難しい

    これらの症状は「本人の努力不足」ではなく、脳の損傷に起因するものです。


    3. 支援のポイント

    高次脳機能障害への支援は、医療・福祉・家族・地域が連携して行うことが重要です。

    • 医療的支援:リハビリテーション(作業療法・言語療法・心理リハなど)

    • 生活支援:メモやスマホでの予定管理、環境を整える工夫

    • 社会的支援:就労支援福祉サービスの利用(障害者手帳や自立支援医療など)

    • 家族支援:本人を責めない理解、介護疲れへのサポート

    特に、外見でわかりにくい分、職場や地域で「理解不足による孤立」を防ぐための啓発活動も大切です。


    4. 福祉や医療に携わる人へのヒント

    • 本人の“できること”に注目する視点を持つ

    • 「忘れやすい」「計画できない」などの症状を具体的に把握し、支援を工夫する

    • 本人・家族の心理的サポートも不可欠

    • 地域連携や多職種協働が回復・生活の質を支える


    まとめ

    • 高次脳機能障害は脳損傷によって記憶・注意・社会的行動などに困難が生じる障害

    • 外見ではわかりにくいため、理解不足や誤解が生じやすい

    • 医療リハビリ・生活支援・社会的支援・家族支援の総合的な関わりが必要

    「見えない障害」に気づき、支える仕組みを広げることが、本人や家族の生きやすさにつながります。