TEACCH(ティーチ)プログラムとは、自閉症の特性を理解し、環境や支援方法を工夫することで生活を安定させる教育アプローチです。構造化された支援の考え方や具体例、日本での活用方法、体験談をわかりやすく解説します。
もくじ
はじめに

自閉症のある人の支援には、さまざまな方法があります。
その中でも世界中で広く知られているのが TEACCH(ティーチ)プログラム です。
教育や福祉の現場だけでなく、家庭での子育てや生活支援にも取り入れられており、日本でも多くの療育機関や学校で活用されています。
この記事では
・TEACCHプログラムとは何か
・どんな支援方法なのか
・日常生活ではどう活用できるのか
を、一般の方にもわかりやすく解説します。
※自閉症についての解説記事はこちら
TEACCHプログラムとは?

TEACCHとは
Treatment and Education of Autistic and related Communication-handicapped Children
の略で、日本語では
「自閉症および関連するコミュニケーション障害のある子どものための治療と教育」
という意味になります。
このプログラムは1970年代にアメリカの ノースカロライナ大学 で開発されました。
TEACCHの大きな特徴は、
「自閉症の特性をなくそうとするのではなく、特性を理解し環境を工夫する」
という考え方です。
つまり
・無理に変えようとしない
・わかりやすい環境を作る
・本人が力を発揮できるようにする
という支援方法なのです。

TEACCHプログラムの基本理念
TEACCHにはいくつかの重要な考え方があります。
自閉症の特性を理解する
自閉症のある人には次のような特徴が見られることがあります。
・予定が変わると不安になりやすい
・曖昧な指示が理解しづらい
・言葉だけの説明が難しいことがある
・視覚的な情報の方が理解しやすい
こうした特性を理解することが、支援の第一歩です。
環境を整えることを重視する
TEACCHでは
本人を変えるより環境を変える
という視点を大切にします。
例えば
・予定を視覚的に示す
・作業の手順をわかりやすくする
・空間を用途ごとに分ける
など、生活しやすい環境づくりを行います。
構造化(ストラクチャー)という考え方

TEACCHプログラムで特に重要なのが
構造化(Structured Teaching)
という考え方です。
これは簡単に言うと
「何をどうすればよいかをわかりやすくする工夫」
のことです。
構造化にはいくつかのポイントがあります。
空間の構造化
場所ごとに役割をはっきりさせます。
例えば
・勉強する場所
・休憩する場所
・遊ぶ場所
を分けることで、行動が理解しやすくなります。
学校や福祉施設では、机や棚の配置を工夫して空間を分けることもあります。
スケジュールの構造化
予定が見えると安心して行動できます。
そのため
・絵カード
・写真
・文字のスケジュール表
などを使い、1日の流れを示します。
例えば
1 朝の会
2 学習
3 休憩
4 作業
5 帰宅
というように、順番がわかる形にします。
作業の構造化
作業をする際にも
①何をするのか
②どこまでやるのか
③終わったらどうするのか
がわかるようにします。
例えば
・箱の中に作業セットを入れる
・左から右へ順番に作業する
・終わったものは別の箱に入れる
などです。
これによって、支援者がいなくても作業が進めやすくなります。
視覚支援(ビジュアルサポート)
TEACCHでは
視覚的な情報を使うこと
がとても重要とされています。
言葉だけで説明するより
・写真
・イラスト
・絵カード
・マーク
などを使うと理解しやすくなることがあります。
例えば
家庭では
・片づける場所に写真を貼る
・靴箱に靴の絵を貼る
・トイレの手順をイラストで示す
といった工夫ができます。

TEACCHプログラムのメリット

TEACCHの考え方を取り入れることで、次のような効果が期待できます。
不安が減る
見通しが立つことで、何をすればいいのかがわかります。
その結果
・混乱
・不安
・パニック
が減ることがあります。
自立につながる
作業の手順がわかるようになると
自分でできること
が増えていきます。
これは
・学校生活
・仕事
・日常生活
など、さまざまな場面で大切な力になります。
周囲の人も関わりやすくなる
環境が整理されていると
・家族
・教員
・支援員
など、関わる人すべてが同じ方法で支援しやすくなります。
日本でのTEACCHの活用

日本でもTEACCHの考え方は広く取り入れられています。
主に次のような場所で活用されています。
・特別支援学校
・通級指導教室
・児童発達支援
・放課後等デイサービス
・就労支援施設
・生活介護事業所
また、家庭でも実践されることが増えています。
例えば
・朝の準備のスケジュール表
・お風呂の手順カード
・宿題の手順表
などです。
家庭でもできるTEACCHの工夫
TEACCHは専門機関だけのものではありません。
家庭でも簡単に取り入れることができます。
1日の流れを見える化する
・朝ごはん
・学校
・宿題
・お風呂
・就寝
などをカードで並べるだけでも効果があります。
片づけ場所をわかりやすくする
おもちゃ箱や棚に
・写真
・イラスト
を貼ることで、どこに戻すのかがわかります。
手順を示す
歯磨きや着替えなども
1 コップを持つ
2 歯ブラシを取る
3 歯磨き粉をつける
というように示すと理解しやすくなります。
体験談 構造化支援での確かな手応え
以前私が勤めていた福祉施設に、自閉症ではなく「自閉的傾向」と診断されたと言われる利用者さんがいらっしゃいました。
ところが、
・時折、激しいパニックが見られ、その行為が長期間に渡って続く場合もあること
・その方の行動やこだわりがほとんど自閉症の特徴そのものであったこと
・その方への専門的支援手法がまだ整理されていなかったこと
などから自閉症支援が効果的だろう、そして、TEACCHプログラムで言われる構造化支援(ストラクチャー)が有効であろうと考え、アプローチしました。
というのも、その福祉施設は自閉症などの知的障害のある方はあまり利用しておらず、主に重症心身障害者と呼ばれる状態にある方々が通所される施設だったため、職員も知的障害ベースの支援があまり経験がなかったのです。
具体的に行なった支援は以下です。
・1日の予定を写真カードで四コマ漫画のように視覚化すること
・取り組む活動をルーティン化させること。例えば、月曜午前の活動はA、火曜午後の活動はBなどといったように、1週間単位でスケジュールをある程度固定化します。そして、月曜午前の活動Aにおいても、本人がやったことがある内容を組み込みます。自閉症の方は経験則で行動する特徴があるためです。反対に初めてやることはとても苦手なので、やることを支援員が示してあげると安心して取り組まれます。
・支援員が本人に何か伝えたい時は、端的な言葉でコミュニケーションを図ります。必要な情報と不必要な情報を明確に切り分けて、本人に余分な情報が入らないように気をつけます。
・手遊びができる安心アイテムを提供するのもいいでしょう。例えば、ラジオの周波数のようにアンテナが常に全方位にたっていたり、他方では、このチャンネル(周波数)だけというように極端になりやすいです。そのため、必要に応じて、こちらから意識のチャンネルを変える工夫を施します。「今は皆んなと活動する時間、今は1人で休む時間」などと、明確にやること(チャンネル)を示してあげることが大切です。そして、休む時間は手遊びアイテムを提供するなどして、休む時間といっても「何して休むのか」といった観点も持っているといいと思います。
特に気に入って頂けたアイテムをご紹介したいと思います。タップおよびクリックすると商品ページに移れます。
そのようにして色々なアプローチを行い、本人にとって最適な支援とは何かを突き詰めていきます。
支援が定着すると、その利用者さんは穏やかに過ごされる日々が増え、嬉しいことに利用者さんから直接関わりを求めてこられることが増えてきました。
・自分のことを考えてくれている
・自分が大切にされている
そういった感覚が信頼関係や安心感に繋がっていくのだと思います。
おすすめの本
『自閉症の僕が跳びはねる理由』
こちらは自閉症の当事者が書いた本です。はじめて読んだ時、「こんなふうに感じているんだ!」と目から鱗でした。今回ご紹介するのはこの一冊ですが、同じ作者が書いた続編やシリーズものも出版されています。当事者の生の声に触れるとより理解が深まると思います。Amazonから本が出ています。詳しくはこちら

『自閉症の特性理解と支援:TEACCHに学びながら』
私が実際に現場で支援をしている際に参考していた考え方です。TEACCHプログラムの「構造化」という考え方は、一見専門的なものに思えますが、私たちが普段から使っている時計やカレンダーも時間を構造化したもの(分かりやすくしたもの)であり、間取りや地図、Googleマップ、駅の路線図なども土地や建物を構造化したものと言えます。これらの一般社会の実例はマクロな構造化ですが、これをミクロな視点で行っていくのが自閉症の方への支援に繋がります。自閉症の方が何に困っているのか、迷っているのか、怒っているのか、それらを分析してアプローチしていくとより良い方向にいくと思います。Amazonから本が出ています。詳しくはこちら

おわりに

TEACCHプログラムは
自閉症の特性を理解し、環境をわかりやすく整えることで生活を支える教育アプローチ
です。
大切なのは
・無理に特性を変えようとしないこと
・わかりやすい環境を作ること
・一人ひとりの個性に合わせること
です。
こうした工夫によって、自閉症のある人が安心して生活し、自分の力を発揮できる社会に近づいていきます。
TEACCHの考え方は、福祉や教育の現場だけでなく、家庭や地域の中でも活かすことができる大切な支援方法と言えるでしょう。
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