今日は「ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)」という、ちょっと難しそうに聞こえるけれど、実は私たちの毎日の心と体の状態に深く関わっている理論をご紹介します。
■ ポリヴェーガル理論ってなに?
ポリヴェーガル理論は、アメリカの神経科学者 ステファン・ポージェス が提唱した理論です。「自律神経の働きと人の安心感・ストレス反応の関係」を説明してくれるもので、カウンセリングや心理療法の分野で注目されています。
■ 自律神経といえば「交感神経」と「副交感神経」
中学校で習ったことを思い出すと…
– 交感神経:戦う・逃げるときに働く(興奮・緊張)
– 副交感神経:リラックスして休むときに働く
こう教わりましたよね。
でもポリヴェーガル理論は、副交感神経をさらに2つに分けて考えます。これがポイントなんです。
■ ポリヴェーガル理論の3つのモード
ポリヴェーガル理論によると、私たちの体と心は3つの状態を行き来しています。
① 社会的つながりモード(安全・安心)
– 副交感神経の「腹側迷走神経」が働いている状態
– 人と安心して話したり、笑ったり、リラックスして過ごせる
– 心も体も落ち着きやすい
② 闘争・逃走モード(危険への反応)
– 交感神経が優位な状態
– 体が緊張し、心拍数が上がる
– ストレスや危機を感じて「戦う」「逃げる」の準備をする
③ 凍りつきモード(絶望・無力感)
– 副交感神経の「背側迷走神経」が働きすぎている状態
– 体が固まる、動けない、無気力になる
– 心がシャットダウンしてしまう感覚に近い
■ 日常生活での例え
例えば…
– 友達とカフェで安心しておしゃべりしている → 社会的つながりモード
– 上司に叱られて心臓がドキドキ → 闘争・逃走モード
– 強いストレスで頭が真っ白になり、体が動かない → 凍りつきモード
誰でもこれらを自然に行き来しています。
■ ポリヴェーガル理論が教えてくれること
この理論からわかるのは、「ストレスで反応するのは心の弱さではなく、体の神経システムの働き」だということです。
つまり、安心できる環境や人とのつながりを感じることが、心身の健康にとってとても大切なんです。
■ 安心感を取り戻すヒント
ポリヴェーガル理論を日常に活かすなら、こんなことが役立ちます。
– 深呼吸をしてゆっくり吐く
– 信頼できる人と話す
– やさしい音楽を聴く
– ペットと触れ合う
– 安全だと感じられる場所で休む
こうした工夫で「社会的つながりモード」に戻りやすくなります。
■ まとめ
ポリヴェーガル理論は、私たちの心と体の反応を「安全・危険・絶望」という3つのモードで説明してくれる理論です。
「なんだか疲れて動けない…」「緊張しすぎて苦しい…」と感じるとき、それは自分が弱いのではなく、体の神経システムが働いているだけ。
そんな風に理解することで、自分を責めずに「安心できる時間」を意識して過ごせるようになるかもしれません。
次回は「ポリヴェーガル理論を活かしたストレスケアの方法」についてもご紹介します!