高齢者や障害のある方の健康を大きく左右する病気のひとつに「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」があります。
介護の現場ではよく耳にしますが、どのような病気で、どんな予防ができるのでしょうか?
誤嚥性肺炎とは?
「誤嚥」とは、本来は胃に送られるべき食べ物や飲み物、さらには唾液や胃液が 誤って気管や肺に入ってしまうこと を指します。
このとき口の中の細菌も一緒に肺へ入ってしまい、炎症を起こすのが「誤嚥性肺炎」です。
特に高齢者では、
• 嚥下機能(飲み込む力)の低下
• 免疫力の低下
• 口腔内の細菌増加
が重なり、発症しやすくなります。
誤嚥性肺炎が起こりやすい場面
• 食事中にむせてしまうとき
• 水分を飲んだときに咳き込むとき
• 夜間の睡眠中(唾液や胃液の逆流による)
見過ごされやすいのは「気づかない誤嚥(不顕性誤嚥)」です。
むせなくても少しずつ肺に入り込み、繰り返すうちに肺炎につながるケースがあります。
予防のためにできること
1. 姿勢の工夫
• 椅子に深く腰掛け、背中をまっすぐに
• 顎を軽く引いて飲み込む
• 食後30分は横にならず、座って休む
2. 食事の工夫
• とろみをつける(水やお茶などはむせやすい)
• 柔らかく飲み込みやすい調理法にする
• 一口の量を少なくする
3. 口腔ケア
• 毎食後の歯磨きやうがい
• 義歯の洗浄
• 専門職(歯科衛生士など)による口腔ケア
口の中を清潔に保つことは、肺炎予防に直結します。
4. 嚥下リハビリ
• 発声練習(パ・タ・カ・ラ体操)
• 舌や頬の運動
• 嚥下体操(首・肩のストレッチも有効)
5. 全身の健康管理
• 水分・栄養をしっかりとる
• 運動習慣で体力を維持する
• かかりつけ医やST(言語聴覚士)への相談
誤嚥性肺炎を防ぐ意味
誤嚥性肺炎は 入院・長期療養の原因 となるだけでなく、繰り返すことで生活の質を大きく下げてしまいます。
しかし、日常のちょっとした工夫やケアによって、リスクを大きく減らすことができます。
介護の現場では「むせ=危険サイン」ととらえ、本人の生活スタイルに合わせた支援を続けることが大切です。
まとめ
• 誤嚥性肺炎 は、誤って気管に入った食べ物や唾液の細菌で肺炎が起こる病気
• 食事中だけでなく、睡眠中の「気づかない誤嚥」も要注意
• 予防のポイントは 姿勢・食事形態・口腔ケア・嚥下リハビリ・健康管理
• 介護現場での支援は「安心して食べること」「生活の質を守ること」につながる