介護福祉の現場で大切な「摂食」と「嚥下」について

食べることは、誰にとっても生きる喜びのひとつです。

しかし高齢になると、噛む力や飲み込む力が弱くなり、「うまく食べられない」「むせてしまう」といった問題が起こることがあります。介護の現場では「摂食(せっしょく)」と「嚥下(えんげ)」という専門的な言葉をよく使います。ここではその意味と支援の工夫についてご紹介します。


摂食とは?

「摂食」とは、食べ物を口に運び、噛んで、飲み込む一連の動作を指します。

スプーンで口に入れる、舌で食べ物をまとめる、奥歯で噛む、といった一つひとつの動きが含まれます。

高齢者や障害のある方の場合、以下のような課題が起こりやすくなります。

• 手が震えてうまく口に運べない

• 入れ歯が合わず噛めない

• 食欲が落ちてしまう

こうした「食べる力」の支援は、介護職員だけでなく、歯科や栄養士とも連携しながら行います。


嚥下とは?

「嚥下」とは、口の中の食べ物や飲み物を喉を通して胃に送り込む働きです。

実は嚥下の動きはとても複雑で、舌・喉・食道が連携して初めてスムーズに行われます。

嚥下機能が弱まると、以下のようなリスクが高まります。

• 食べ物や水分が気管に入ってしまう(誤嚥)

誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)

• 栄養不足や脱水

このため介護現場では「安全に飲み込めるか」を常に観察し、適切な食形態や姿勢を工夫することが欠かせません。


介護現場での工夫

摂食・嚥下に課題のある方への支援は、一人ひとりに合わせた工夫が必要です。

1. 食事形態の工夫

• きざみ食:噛む力が弱い人向けに小さく刻む

• ミキサー食:なめらかにして飲み込みやすくする

• とろみ調整:水分にとろみをつけて誤嚥を防ぐ

2. 姿勢の工夫

• 椅子に深く腰掛けて少し前かがみにする

• 顎を軽く引いて飲み込む(誤嚥予防)

3. リハビリの工夫

• 嚥下体操(舌や頬を動かす練習)

• 発声練習(「パ・タ・カ・ラ体操」など)


摂食・嚥下支援の大切さ

摂食・嚥下は「栄養をとる」だけでなく、**食べる楽しみ・生活の質(QOL)**にも大きく関わります。

介護福祉の現場では、本人が「最後まで自分らしく食べられるように」支えることが重要な役割です。


まとめ

• 摂食=食べ物を口に入れ、噛み、まとめること

• 嚥下=口から喉・食道を通って胃に送り込むこと

• 支援では「食形態」「姿勢」「リハビリ」の工夫が大切

• 誤嚥や栄養不足を防ぎ、安心して「食べる喜び」を守ることが介護福祉の使命


「摂食・嚥下」に続くシリーズ記事として、次回は介護福祉の現場で大きなテーマとなる誤嚥性肺炎について、わかりやすくまとめた記事を作りました。