障害のある人が社会の一員として働き、生活の基盤を築くためには、雇用の場が欠かせません。その仕組みを法律で定めているのが 「障害者雇用制度」 です。
今回は、制度の概要や目的、現状の課題について解説します。
1. 障害者雇用制度の目的
障害者雇用制度は、障害のある人が社会で自立した生活を送れるよう、働く機会を確保することを目的としています。
背景には、障害があることで就職や職場定着が難しい現実があり、「平等な就労の機会」を保障するために法制度が整えられてきました。
2. 法的根拠:「障害者雇用促進法」
障害者雇用制度の基盤は 障害者雇用促進法(1960年制定、以降改正を重ねている)です。
この法律では、以下の内容が定められています。
• 事業主には一定割合の障害者を雇用する義務(法定雇用率)がある
• 雇用義務に違反した場合、納付金を支払う仕組み
• 障害者を雇用した企業には助成金や支援制度あり
• 障害者が安心して働ける職場環境整備を推進
3. 法定雇用率とは?
企業や官公庁には「全労働者のうち一定割合以上を障害者にする」という雇用義務が課されています。
• 民間企業:2.5%(2024年度現在、今後段階的に引き上げ予定)
• 国・地方公共団体:2.8%
• 教育委員会:2.5%
例えば、従業員100人の会社であれば、2〜3人の障害者を雇用する必要があります。
4. 障害者雇用の形態
雇用のスタイルは多様で、一人ひとりの特性に応じた働き方が可能です。
• 一般企業での雇用(オープン就労)
• 特例子会社での雇用(大企業が障害者雇用を進めるために設立する子会社)
• 福祉サービスを活用した就労(就労継続支援A型・B型事業所など)
5. 支援の仕組み
障害者が職場で安心して働けるよう、さまざまな支援制度があります。
• ハローワークの専門援助部門(障害者専門の職業相談)
• 障害者就業・生活支援センター:就労と生活を一体的にサポート
• ジョブコーチ支援:職場に入り、働き方や人間関係の調整を支援
• 助成金制度:設備改善や雇用継続のために事業主が利用可能
6. 現状と課題
• 障害者雇用者数は年々増加しており、2023年には過去最高を更新
• しかし、中小企業での雇用が進みにくい現状がある
• 「雇用率を満たすためだけの採用」にとどまるケースもある
• 職場定着支援やキャリアアップの仕組みがまだ不足している
まとめ
• 障害者雇用制度は「障害者雇用促進法」に基づき、法定雇用率の達成を義務づけている
• 働き方は一般企業・特例子会社・就労支援事業所など多様
• 就労支援や助成金制度が整備されているが、職場定着や質の確保が課題
障害者雇用は「法律で決められているから」だけではなく、社会の多様性を広げ、企業にとっても新しい力を得られる仕組みです。これからは「数の確保」から「働きやすさの確保」へと視点を広げることが求められています。