今回は前回紹介した「ポリヴェーガル理論」をもとに、日常生活でできるストレスケアの方法をご紹介します。難しい専門用語はできるだけかみくだいて説明しますので、リラックスしながら読んでみてください。
ポリヴェーガル理論とは?
前回のおさらいですが、ポリヴェーガル理論とは、アメリカの神経科学者スティーブン・ポージェス博士が提唱した、自律神経に関する理論です。
従来は「交感神経」と「副交感神経」という二つの働きでストレスやリラックスを説明していましたが、ポリヴェーガル理論では副交感神経をさらに2つに分けて考えます。
• 交感神経 … 緊張・戦う・逃げる反応
• 背側迷走神経(古い副交感神経) … フリーズ、心や体が固まってしまう反応
• 腹側迷走神経(新しい副交感神経) … 安心・つながり・リラックスを感じる状態
つまり、人は「緊張」「固まる」「安心」という3つのモードを行き来していると考えられるのです。
ストレスがかかるとどうなる?
強いストレスを感じると、まず交感神経が優位になり、心拍数が上がったりイライラしたりします。
さらに耐えきれなくなると「背側迷走神経」が働き、無気力になったり心が閉じてしまうこともあります。
そのため、ストレスケアのポイントは 「安心・安全を感じられる状態=腹側迷走神経を活性化すること」 です。
ポリヴェーガル理論を活かしたストレスケアの方法
1. 呼吸をゆっくり整える
腹式呼吸や4秒吸って6秒吐くようなリズム呼吸は、迷走神経を刺激し、リラックスモードに導きます。
2. 安心できる人とつながる
信頼できる人との会話、目を合わせて微笑むことなどは腹側迷走神経を活性化します。「安心の社会的つながり」が一番の回復資源です。
3. 心地よい声や音楽を聴く
人の声のトーンやリズムは迷走神経に直接影響します。落ち着いた音楽や優しい声を聞くことも効果的です。
4. 身体を軽く動かす
ストレッチや散歩など、無理のない運動は交感神経の過剰な働きを和らげます。
5. 安心できる環境を整える
照明を少し落とす、自然の香りを取り入れる、好きな飲み物をゆっくり味わうなど、「安全」を感じられる工夫がストレスケアにつながります。
まとめ
ポリヴェーガル理論は、単なるリラックス方法ではなく「安心・つながり」が人間にとって根本的な回復の鍵であることを教えてくれます。
ストレスを感じたときには、「安心モード」に戻れる工夫を意識してみましょう。
小さな実践の積み重ねが、心と体の健康を守ってくれます。
次回は背側迷走神経とも関わりのある「学習性無力感」についての記事を紹介します!