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  • 高次脳機能障害とは?症状・原因・支援のポイントを解説

    「事故や病気のあと、性格が変わった」「仕事や生活がうまくいかなくなった」――。こうした背景にあるのが、高次脳機能障害です。

    今回は、医療や福祉の現場でも注目されている高次脳機能障害について、その特徴や支援のあり方を紹介します。


    1. 高次脳機能障害とは

    高次脳機能障害とは、事故や病気による脳の損傷が原因で、記憶や注意、感情のコントロールなどに障害が生じる状態を指します。

    主な原因:

    • 脳外傷(交通事故・転落などによる頭部外傷)

    • 脳血管障害(脳出血・脳梗塞など)

    • 脳炎・脳腫瘍 など

    身体的な麻痺が目立たない場合も多く、「外見ではわかりにくい障害」として、周囲の理解を得にくい特徴があります。


    2. 主な症状

    高次脳機能障害の症状は多様で、人によって現れ方が異なります。代表的なものを挙げると:

    • 記憶障害:新しいことを覚えられない、予定を忘れてしまう

    • 注意障害:集中力が続かない、同時に複数のことができない

    • 遂行機能障害:計画を立てて行動することが苦手、段取りができない

    • 社会的行動障害:感情のコントロールが難しい、場に合わない発言や行動をしてしまう

    • 失語・失行・失認:言葉が出にくい、動作の手順がわからない、認識が難しい

    これらの症状は「本人の努力不足」ではなく、脳の損傷に起因するものです。


    3. 支援のポイント

    高次脳機能障害への支援は、医療・福祉・家族・地域が連携して行うことが重要です。

    • 医療的支援:リハビリテーション(作業療法・言語療法・心理リハなど)

    • 生活支援:メモやスマホでの予定管理、環境を整える工夫

    • 社会的支援:就労支援福祉サービスの利用(障害者手帳や自立支援医療など)

    • 家族支援:本人を責めない理解、介護疲れへのサポート

    特に、外見でわかりにくい分、職場や地域で「理解不足による孤立」を防ぐための啓発活動も大切です。


    4. 福祉や医療に携わる人へのヒント

    • 本人の“できること”に注目する視点を持つ

    • 「忘れやすい」「計画できない」などの症状を具体的に把握し、支援を工夫する

    • 本人・家族の心理的サポートも不可欠

    • 地域連携や多職種協働が回復・生活の質を支える


    まとめ

    • 高次脳機能障害は脳損傷によって記憶・注意・社会的行動などに困難が生じる障害

    • 外見ではわかりにくいため、理解不足や誤解が生じやすい

    • 医療リハビリ・生活支援・社会的支援・家族支援の総合的な関わりが必要

    「見えない障害」に気づき、支える仕組みを広げることが、本人や家族の生きやすさにつながります。

  • 福祉領域における血液検査結果の「WBC」と「CRP」の重要性とは?

    福祉の現場では、利用者さんの健康状態を日々観察することがとても大切です。その中でも、病院で行われる「血液検査」の結果を理解することは、体調変化にいち早く気づくための重要な手がかりになります。特に「WBC(白血球数)」と「CRP(C反応性タンパク)」は、感染症や炎症を把握するうえでよくチェックされる項目です。


    1. WBC(白血球数)とは?

    – 白血球は、体の中に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃する「免疫の主役」
    – 血液検査では WBC値(白血球の数)を測定します
    – 正常範囲より高ければ「感染や炎症の可能性」、低ければ「免疫力の低下」を示すことがあります

    例:
    ・風邪や肺炎などの感染症 → WBCが増加
    ・抗がん剤治療などで骨髄抑制がある場合 → WBCが減少


    2. CRP(C反応性タンパク)とは?

    – CRPは、体の中で炎症が起きたときに血液中に増える物質
    – 炎症の「程度」を数値で示すため、感染やケガの重症度を把握する指標になります

    例:
    ・風邪の初期 → CRPはあまり上がらない
    肺炎や尿路感染症など全身に影響する炎症 → CRPが大きく上昇


    3. 福祉現場での活かし方

    福祉職は医師や看護師ではありませんが、利用者の生活を支える立場として血液検査の意味を理解しておくことは役立ちます。

    – 発熱時にWBC・CRPの数値を把握することで「ただの風邪か」「重い感染か」を医療者と共有できる
    – 利用者さんやご家族に「数値が高いので注意が必要です」と説明する際の根拠になる
    感染症が広がるのを早期に察知し、他の利用者への感染予防につなげられる


    4. まとめ

    WBCとCRPは、どちらも「体の中で感染や炎症が起きていないか」を判断する大切な指標です。
    – WBC → 白血球の数(免疫の働き具合)
    – CRP → 炎症の強さ(どのくらい重いか)

    福祉現場において、これらの数値を理解し医療職と連携することは、利用者さんの健康を守るための大きな力になります。


    免疫についてをシリーズ化したこちらの記事をも一緒にお読み頂けるとさらに理解が深まります。免疫機能を高めるためにできる生活習慣

  • 家庭でできる原始反射への関わり方

    原始反射が残っているからといって、すぐに心配する必要はありません。家庭でもできる工夫や遊びを取り入れることで、子どもの体の動きをサポートすることができます。


    家庭でできる工夫と遊び

    1. バランス遊び

    バランスボールやクッションの上で揺れる遊びは、体幹を鍛え、反射の統合を助けます。

    2. ハイハイ運動

    赤ちゃんのようにハイハイをする動きは、脳と体のつながりを活性化させます。小学生でも遊び感覚で取り入れられます。

    3. ブランコやトランポリン

    前後・上下・左右の動きを楽しむことで、感覚統合を促し、残存反射の影響を和らげます。

    4. 手足を使った遊び

    • 手押し車

    • ボール投げ

    • クライミング遊び

    これらは手足の協調性を育てるとともに、体の使い方を学ぶ良い機会になります。


    日常生活での支え方

    • 姿勢を整えやすい椅子や机を用意する

    • 勉強の合間に体を動かす時間を入れる

    • できたことをしっかり認めて安心感を育てる


    まとめ

    家庭でのちょっとした遊びや環境調整が、子どもの発達に大きなプラスになります。もし困りごとが続くようであれば、専門家(発達支援、作業療法士など)に相談するのも安心につながります。

  • 原始反射が残っているときに見られるサインとは?

    私たちが生まれたときに備わっている「原始反射」は、通常は成長とともに消えていきます。しかし、何らかの理由で反射が残存すると、姿勢や運動、学習面に影響を及ぼすことがあります。今回は、原始反射が残っているときに見られるサインについて紹介します。


    よく見られるサインの例

    1. モロー反射が残っている場合

    • 大きな音や刺激に敏感に反応して驚きやすい

    • 集中力が途切れやすい

    • 不安感が強くなりやすい

    2. 把握反射が残っている場合

    • 筆記用具や道具の操作がぎこちない

    • 細かい作業が苦手

    • 力の加減が難しい

    3. 非対称性緊張性頸反射(ATNR)が残っている場合

    • 書字のときに頭を傾けてしまう

    • スポーツなどで体の左右の連動が難しい

    • 視線の移動や読み書きがしにくい

    4. 残存反射全般に共通するサイン

    • 落ち着きがないように見える

    • 姿勢が安定しにくい(椅子にまっすぐ座るのが苦手)

    • 動きがぎこちない

    • 学習に集中できない


    なぜサインが出るのか?

    原始反射が残っていると、体を自分の意思で思い通りにコントロールすることが難しくなるためです。その結果、運動面だけでなく、学校生活や日常生活の中でも困りごとにつながることがあります。

    次は「家庭でできる関わり方」について紹介します!

    (さらに…)
  • 原始反射とは?発達と支援に役立つ基礎知識

    私たち人間は、生まれた瞬間から「生きるための仕組み」を持って生まれてきます。そのひとつが**原始反射(primitive reflex)**と呼ばれるものです。原始反射は、新生児や乳児の成長過程で自然に現れる、自分の意思ではコントロールできない反射的な動きのことを指します。


    原始反射の役割

    原始反射は、赤ちゃんがまだ脳の発達が未熟な時期に、命を守り、生きる力を支える仕組みとして働きます。

    たとえば、母乳を吸うための「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」や、危険を感じたときに手足を大きく広げる「モロー反射」などがあります。

    これらの反射は成長に合わせて次第に消失し、代わりに**意思をもった運動(随意運動)**へと切り替わっていきます。


    主な原始反射の種類

    モロー反射

    大きな音や強い刺激に驚くと、両腕を大きく広げてから抱きつくように戻す反応。生後4か月ごろまでに消失。

    吸啜反射

    口に触れたものを吸おうとする反応。授乳のために欠かせない反射。

    探索反射(ルーティング反射)

    頬や口の周りを触れると、そちらに顔を向けて口を開く反応。母乳や哺乳瓶を探すために必要。

    把握反射

    手に触れたものを強く握りしめる反応。足にも同様の反射があり、立つ準備につながる。

    非対称性緊張性頸反射(ATNR)

    首を横に向けると、顔の向きと同じ側の手足が伸び、反対側が曲がる反応。「フェンシングの姿勢」とも呼ばれる。


    発達との関わり

    原始反射は通常、生後数か月〜1年以内に消失していきます。これは、脳が成熟し、自分の意思で体を動かせるようになる過程を意味しています。

    しかし、発達に何らかの遅れや特性がある場合、反射が長く残ってしまうことがあります。その場合、姿勢の崩れや集中力の持続のしにくさ、学習への影響などが見られることもあります。


    支援の現場での視点

    福祉や療育の現場では、「原始反射が残っているかどうか」は支援方法を考える上での重要なヒントになります。

    • 動きづらさの背景を理解する

    • 感覚統合やリハビリの視点を取り入れる

    • 遊びや運動を通じて、反射の統合を促す

    こうした視点をもつことで、子ども一人ひとりの発達をより丁寧にサポートすることができます。


    まとめ

    原始反射は赤ちゃんが生きるために備わった大切な仕組みです。

    成長とともに自然に消えていきますが、発達の過程で残存する場合は、生活や学習に影響することもあります。支援者や保護者が「反射」という体のサインを理解しておくことは、その子に合った関わりを見つける大きな手がかりになります。

    次回は「①原始反射が残っているときに見られるサイン」と「②家庭でできる関わり方」について紹介します!

    (さらに…)
  • 学習性無力感とは?立ち直りのヒントを探る

    こんにちは。今回は「学習性無力感」についてご紹介します。心理学の専門用語ですが、日常生活の中で誰もが感じたことのある気持ちに関係しています。


    学習性無力感とは?

    学習性無力感(Learned Helplessness)とは、心理学者マーティン・セリグマンが提唱した理論です。

    「何をやってもうまくいかない」「努力しても意味がない」という経験を繰り返すことで、挑戦する意欲や気力を失ってしまう状態を指します。


    実験から生まれた理論

    セリグマンは動物実験を通して、避けられないストレスを繰り返し経験すると、その後ストレスを避けられる状況になっても動こうとしなくなることを発見しました。

    この現象が人間の心理状態にも当てはまると考えられたのです。


    日常生活での学習性無力感

    例えば…

    • 何度勉強しても成績が上がらず、やる気をなくしてしまう

    • 仕事で努力しても評価されず、自信を失う

    • 対人関係で何をしても改善せず、人付き合いを避けるようになる

    こうした状況が続くと「どうせ無理だ」と感じ、行動する力が弱まってしまいます。


    なぜ起こるのか?

    学習性無力感は、ストレスや失敗を「自分のせい」「自分には能力がない」と考えてしまう認知の偏りから生まれることがあります。

    特に真面目で責任感の強い人ほど、自分を責めやすく、無力感に陥りやすいとも言われています。


    立ち直りのヒント

    学習性無力感に陥ったときは、次のような工夫が役立ちます。

    • 小さな成功体験を積み重ねる(簡単なタスクから始める)

    • 信頼できる人に相談する

    • 「失敗は自分の能力不足ではなく、状況のせいかもしれない」と考え直す

    • 休養や趣味で心をリフレッシュする

    こうした工夫で少しずつ「やればできる」という感覚を取り戻せます。


    まとめ

    学習性無力感は、誰にでも起こりうる心理的な状態です。

    しかし、それは「永遠に続くもの」ではありません。

    小さな一歩からでも行動を積み重ねることで、再び前向きな気持ちを取り戻すことができます。

    自分を責めすぎず、環境を工夫しながら、回復のプロセスを大切にしていきましょう。

  • ポリヴェーガル理論を活かしたストレスケアの方法

    今回は前回紹介した「ポリヴェーガル理論」をもとに、日常生活でできるストレスケアの方法をご紹介します。難しい専門用語はできるだけかみくだいて説明しますので、リラックスしながら読んでみてください。


    ポリヴェーガル理論とは?

    前回のおさらいですが、ポリヴェーガル理論とは、アメリカの神経科学者スティーブン・ポージェス博士が提唱した、自律神経に関する理論です。

    従来は「交感神経」と「副交感神経」という二つの働きでストレスやリラックスを説明していましたが、ポリヴェーガル理論では副交感神経をさらに2つに分けて考えます。

    交感神経 … 緊張・戦う・逃げる反応

    背側迷走神経(古い副交感神経) … フリーズ、心や体が固まってしまう反応

    腹側迷走神経(新しい副交感神経) … 安心・つながり・リラックスを感じる状態

    つまり、人は「緊張」「固まる」「安心」という3つのモードを行き来していると考えられるのです。


    ストレスがかかるとどうなる?

    強いストレスを感じると、まず交感神経が優位になり、心拍数が上がったりイライラしたりします。

    さらに耐えきれなくなると「背側迷走神経」が働き、無気力になったり心が閉じてしまうこともあります。

    そのため、ストレスケアのポイントは 「安心・安全を感じられる状態=腹側迷走神経を活性化すること」 です。


    ポリヴェーガル理論を活かしたストレスケアの方法

    1. 呼吸をゆっくり整える

    腹式呼吸や4秒吸って6秒吐くようなリズム呼吸は、迷走神経を刺激し、リラックスモードに導きます。

    2. 安心できる人とつながる

    信頼できる人との会話、目を合わせて微笑むことなどは腹側迷走神経を活性化します。「安心の社会的つながり」が一番の回復資源です。

    3. 心地よい声や音楽を聴く

    人の声のトーンやリズムは迷走神経に直接影響します。落ち着いた音楽や優しい声を聞くことも効果的です。

    4. 身体を軽く動かす

    ストレッチや散歩など、無理のない運動は交感神経の過剰な働きを和らげます。

    5. 安心できる環境を整える

    照明を少し落とす、自然の香りを取り入れる、好きな飲み物をゆっくり味わうなど、「安全」を感じられる工夫がストレスケアにつながります。


    まとめ

    ポリヴェーガル理論は、単なるリラックス方法ではなく「安心・つながり」が人間にとって根本的な回復の鍵であることを教えてくれます。

    ストレスを感じたときには、「安心モード」に戻れる工夫を意識してみましょう。

    小さな実践の積み重ねが、心と体の健康を守ってくれます。

    次回は背側迷走神経とも関わりのある「学習性無力感」についての記事を紹介します!

    (さらに…)
  • ポリヴェーガル理論とは?心と体をつなぐ神経のお話

    今日は「ポリヴェーガル理論(Polyvagal Theory)」という、ちょっと難しそうに聞こえるけれど、実は私たちの毎日の心と体の状態に深く関わっている理論をご紹介します。


    ポリヴェーガル理論ってなに?
    ポリヴェーガル理論は、アメリカの神経科学者 ステファン・ポージェス が提唱した理論です。「自律神経の働きと人の安心感・ストレス反応の関係」を説明してくれるもので、カウンセリングや心理療法の分野で注目されています。


    自律神経といえば「交感神経」と「副交感神経」
    中学校で習ったことを思い出すと…
    – 交感神経:戦う・逃げるときに働く(興奮・緊張)
    – 副交感神経:リラックスして休むときに働く
    こう教わりましたよね。
    でもポリヴェーガル理論は、副交感神経をさらに2つに分けて考えます。これがポイントなんです。


    ポリヴェーガル理論の3つのモード
    ポリヴェーガル理論によると、私たちの体と心は3つの状態を行き来しています。

    社会的つながりモード(安全・安心)
    – 副交感神経の「腹側迷走神経」が働いている状態
    – 人と安心して話したり、笑ったり、リラックスして過ごせる
    – 心も体も落ち着きやすい

    闘争・逃走モード(危険への反応)
    – 交感神経が優位な状態
    – 体が緊張し、心拍数が上がる
    – ストレスや危機を感じて「戦う」「逃げる」の準備をする

    凍りつきモード(絶望・無力感)
    – 副交感神経の「背側迷走神経」が働きすぎている状態
    – 体が固まる、動けない、無気力になる
    – 心がシャットダウンしてしまう感覚に近い


    日常生活での例え
    例えば…
    – 友達とカフェで安心しておしゃべりしている → 社会的つながりモード
    – 上司に叱られて心臓がドキドキ → 闘争・逃走モード
    – 強いストレスで頭が真っ白になり、体が動かない → 凍りつきモード
    誰でもこれらを自然に行き来しています。


    ポリヴェーガル理論が教えてくれること
    この理論からわかるのは、「ストレスで反応するのは心の弱さではなく、体の神経システムの働き」だということです。
    つまり、安心できる環境や人とのつながりを感じることが、心身の健康にとってとても大切なんです。


    安心感を取り戻すヒント
    ポリヴェーガル理論を日常に活かすなら、こんなことが役立ちます。
    – 深呼吸をしてゆっくり吐く
    – 信頼できる人と話す
    – やさしい音楽を聴く
    – ペットと触れ合う
    – 安全だと感じられる場所で休む
    こうした工夫で「社会的つながりモード」に戻りやすくなります。


    まとめ
    ポリヴェーガル理論は、私たちの心と体の反応を「安全・危険・絶望」という3つのモードで説明してくれる理論です。
    「なんだか疲れて動けない…」「緊張しすぎて苦しい…」と感じるとき、それは自分が弱いのではなく、体の神経システムが働いているだけ。
    そんな風に理解することで、自分を責めずに「安心できる時間」を意識して過ごせるようになるかもしれません。

    次回は「ポリヴェーガル理論を活かしたストレスケアの方法」についてもご紹介します!

  • 神経生理学をやさしく解説:交感神経と副交感神経のお話

    今回は「神経生理学」という分野から、日常生活に深く関わっている『自律神経』についてわかりやすくご紹介します。


    ■ 神経生理学とは?
    神経生理学とは、神経の働きや仕組みを研究する学問です。私たちが呼吸したり、心臓が動いたり、緊張やリラックスを感じるのも、神経の働きがあってこそ。その中でも特に生活に大きな影響を与えているのが『自律神経』です。


    ■ 自律神経とは?
    自律神経は、私たちの意思とは関係なく、体を自動的に調整してくれる神経の仕組みです。例えば、寝ているときでも心臓が止まらないのは、この自律神経が働いてくれているから。自律神経は大きく2つに分けられます。
    – 交感神経
    – 副交感神経


    ■ 交感神経とは?
    交感神経は、いわば『活動のスイッチ』です。危険を感じたり、ストレスを受けたり、集中して作業をしているときに活発になります。
    – 心拍数を上げる
    – 呼吸を速くする
    – 血圧を上げる
    といった働きをして、体を「戦う・逃げる」モードに切り替えます。


    ■ 副交感神経とは?
    副交感神経は『休息のスイッチ』です。リラックスしているときや、睡眠中に働きます。
    – 心拍数を下げる
    – 消化を促す
    – 呼吸をゆっくりにする
    といった働きで、体を回復モードに導きます。


    バランスが大事
    交感神経と副交感神経は、シーソーのようにバランスをとっています。どちらかに偏りすぎると、心身に不調が出やすくなります。例えば、交感神経が強く働きすぎると、不眠や緊張状態が続き、逆に副交感神経が強すぎると、やる気が出なかったり眠気が取れないこともあります。


    日常生活での整え方
    自律神経を整えるには、ちょっとした工夫が役立ちます。
    – 朝は太陽の光を浴びて交感神経をオンにする
    – 夜はスマホやPCを控えて副交感神経を働かせる
    – 深呼吸やストレッチでリラックスする
    – 規則正しい生活リズムを心がける
    こうした習慣が、自律神経のバランスを整えてくれます。


    まとめ
    神経生理学は難しい学問のように思えるかもしれませんが、私たちの体の調子を理解するうえでとても身近な学問です。交感神経と副交感神経の働きを知ることで、「なぜ疲れているのか」「どうすれば元気になるのか」が見えてきます。日々の生活にちょっとした工夫を取り入れて、自律神経を味方につけていきましょう。


    次回は今回の内容をさらに深掘った面白い記事を紹介します。

    「ポリヴェーガル理論とは?心と体をつなぐ神経のお話」

    (さらに…)
  • 医療的ケアを必要とする利用者への支援で大切な考え方

    福祉の現場では、胃ろう、腸ろう、鼻腔チューブ、気管切開など、医療的ケアを必要とされる利用者の方々への支援が求められる場面が増えています。こうした支援は、単なる医療行為の補助ではなく、利用者の生活を支える大切な役割を担っています。本記事では、医療的ケアを必要とする利用者への支援において大切にしたい考え方を紹介します。


    1. 安全・安心を第一に

    医療的ケアは、命に直結する繊細な支援です。感染予防や誤操作を防ぐために、手洗い・手指消毒・器具の管理などの基本を徹底することが重要です。また、利用者本人やご家族にとって安心できるケアであるよう、丁寧な説明や声かけを行うことも欠かせません。


    2. 利用者の尊厳を尊重する

    医療的ケアが必要な方であっても、一人の生活者であり、尊厳ある存在です。ケアを行う際には「処置の対象」としてではなく、「生活を共にする仲間」として接することが大切です。プライバシーへの配慮や、本人の意思をできる限り尊重する姿勢を忘れてはいけません。


    3. チームで支える

    医療的ケアは一人の職員だけで完結するものではありません。看護師、介護職員、家族、医師など、多職種で情報を共有しながら支援を行うことが求められます。チーム全体で同じ方向性を持ち、利用者の生活の質を高めるために協力していく姿勢が重要です。


    4. 学び続ける姿勢

    医療的ケアの技術や知識は、日々進歩しています。また、利用者一人ひとりの状態に合わせた柔軟な対応も必要です。研修や勉強会に参加したり、日常の実践を振り返ったりしながら、学び続ける姿勢を持ちましょう。


    5. 利用者の「生活」を意識する

    医療的ケアはあくまで「生活の一部」であり、目的は「生きること」や「その人らしい生活を送ること」です。医療的ケアの時間が利用者の楽しみや社会参加の妨げにならないよう、生活全体の中でバランスを考えて支援していくことが大切です。


    まとめ

    医療的ケアを必要とする利用者への支援は、専門的な技術と同時に、人としての温かさや共感が求められるものです。安全を守りつつ、利用者の尊厳を尊重し、生活を支える視点を大切にすることで、利用者と支援者双方にとって豊かな時間が生まれるでしょう。