タグ: 医療

  • チーム全体で取り組む職員の健康管理~福祉現場での安全・安心な支援のために~

    福祉の仕事は、心身ともに負担が大きい分野です。

    一人ひとりのセルフケアは大切ですが、「チーム全体で支える仕組み」 が整っているかどうかが、長期的な健康維持のカギとなります。

    ここでは、職員の健康管理をチーム全体で取り組むためのポイントを整理します。


    1. 健康管理を「組織の課題」として捉える

    • 職員の健康は「個人の責任」ではなく「組織の基盤」

    • 健康でなければ、質の高い支援も安全も守れない

    • 管理職やリーダーが「健康を守る文化」を発信することが大切


    2. 職場内でのチェック体制

    • 定期的な体調確認(朝のミーティングやシート記入)

    • 無理をしているサインを共有(残業の多さ・疲労の訴え・遅刻増加など)

    • 休む勇気を持てる雰囲気づくり(「休んでいいよ」と言えるチーム風土)


    3. 情報共有と支え合い

    • 健康に関する勉強会や研修の実施

    • セルフケアの工夫をチーム内でシェア

    • ストレスチェックの結果を職場改善につなげる


    4. 勤務環境の工夫

    • シフト調整を柔軟に行い、過重労働を防ぐ

    • 定期的に休暇を取れるように計画を立てる

    • 職場に「休憩の質」を高める工夫(仮眠スペース、リフレッシュコーナーなど)


    5. メンタルヘルス支援

    • 定期的なメンタルヘルス研修

    • 職場内での相談窓口やEAP(従業員支援プログラム)の活用

    • 「相談できる先輩・上司」を明確にしておく


    6. チームでできるアクション例

    • 「お疲れさま」「ありがとう」を伝える習慣

    • 月1回の「健康テーマミーティング」

    • 体調不良時は無理に出勤させず、代替支援の体制を整える

    • 健康に関するポスターや掲示物を共有スペースに貼る


    まとめ

    職員の健康は、利用者さんの安全・安心な生活と直結しています。

    「セルフケア+チームケア」 の両輪で取り組むことで、福祉現場全体の持続可能性が高まります。

    健康管理は一人で抱えるものではなく、「チーム全体の資産」 であることを意識しましょう。


    研修用ワークの例(おすすめ)

    記事を研修で使う際は、以下の問いを取り入れると実践的です。

    1. 「最近、職場で体調不良や疲労を抱えている人はいませんか?」

    2. 「自分ができる“チームの健康を守る一歩”は何ですか?」

    3. 「職場全体で改善できそうな工夫は何ですか?」

  • 福祉職員が自分の免疫力を守るためにできるセルフケア

    福祉現場では、日々多くの利用者さんと関わり、感染症リスクや体力的・精神的な負担を受けやすい環境にあります。

    そのため、職員自身が健康を守り、免疫力を維持することが、利用者さんへの安心・安全な支援につながります。

    ここでは、福祉職員が取り入れやすいセルフケアのポイントを紹介します。


    1. 基本の生活習慣を整える

    • バランスの良い食事

    • タンパク質(肉・魚・卵・豆類)、野菜、発酵食品を意識

    • 甘い物や加工食品の摂りすぎに注意

    • 十分な睡眠

    • シフト勤務でも規則正しい睡眠リズムを意識

    • 寝る前のスマホ・カフェインは控える


    2. ストレスをためすぎない

    • セルフモニタリング

    • 「最近疲れている」「イライラが増えた」など自分の心の変化を振り返る

    • リフレッシュ法を持つ

    • 軽い運動、趣味の時間、深呼吸、マインドフルネスなど

    • 職場内で相談しやすい環境づくり

    • チームで支え合い、ひとりで抱え込まない


    3. 適度な運動を取り入れる

    • 筋力トレーニング:体力維持と基礎代謝アップに効果的

    • 有酸素運動:ウォーキングや軽いジョギングで免疫細胞の働きを活性化

    • ストレッチ:肩こり・腰痛の予防にも


    4. 感染症予防の徹底

    • 手洗い・うがい・マスクの習慣化

    • 予防接種の積極的な利用(インフルエンザ・コロナワクチンなど)

    • 疲れているときこそ感染に注意


    5. 栄養と水分補給を意識する

    • 水分:こまめな水分補給(カフェインではなく水やお茶を中心に)

    • 栄養補助:サプリや栄養ドリンクに頼りすぎず、まずは日常の食事から


    6. 自己チェックを習慣にする

    • 体調日誌を簡単にメモ(睡眠時間・体調・気分など)

    • 免疫低下のサイン(疲れやすい・風邪をひきやすいなど)に早く気づく

    • 必要があれば 医療機関で早めに相談


    まとめ

    福祉職員が自分の健康を守ることは、決して「わがまま」ではありません。

    むしろ 利用者さんに安心して支援を届けるための土台 です。

    「休む勇気」「助けを求める勇気」も、セルフケアの一部として大切にしていきましょう。


    次回は「研修用資料」としても使える形で、チーム全体で取り組む職員の健康管理 をテーマに記事をまとめました。

    チーム全体で取り組む職員の健康管理~福祉現場での安全・安心な支援のために~

  • 福祉現場での「免疫力低下サイン」の観察と支援のポイント

    免疫力の低下は、利用者さんの健康状態を左右する大きな要因です。

    福祉現場では、医療機関のような検査設備がないことが多いため、日々の観察と記録 がとても重要になります。

    ここでは、前回紹介した免疫力低下のサインをもとに、現場での観察・支援方法を整理していきます。


    1. 風邪や感染症にかかりやすい場合

    • 観察ポイント:発熱、咳、鼻水、のどの痛みなどの有無を日々チェック。

    支援方法:

    • 室内の換気や加湿を徹底する

    • 手洗い・うがい・マスクの声かけ

    • 感染症流行期には外出や集団活動の工夫


    2. 傷や皮膚の治りが遅い場合

    • 観察ポイント:小さな擦り傷や床ずれの経過を写真や記録で確認。

    支援方法:

    • 清潔保持と適切な処置を行う

    • 栄養(特にタンパク質やビタミン)を意識した食事支援

    • 医療機関への早めの連携


    3. 疲れやすさ・倦怠感が続く場合

    • 観察ポイント:日中の眠気や活動量の減少を見守る。

    支援方法:

    • 適度な休憩時間を確保

    • 睡眠環境の整備(静かな環境・照明調整)

    • 無理のない運動習慣をサポート


    4. 口内炎やヘルペスが繰り返し出る場合

    • 観察ポイント:口腔内の状態や食事中の痛みの訴えをチェック。

    支援方法:

    • 口腔ケアを丁寧に行う

    食べやすい形態(やわらかい・刺激の少ない食事)を工夫

    • 繰り返す場合は医師へ相談


    5. 腸の不調(便秘・下痢)が続く場合

    • 観察ポイント:排便の回数・性状を日誌で記録。

    支援方法:

    • 水分摂取を促す

    • 食物繊維や乳酸菌を取り入れた食事提供

    • 長引く場合は受診を勧める


    6. 睡眠の質の低下が見られる場合

    • 観察ポイント:夜間の覚醒回数、昼間の眠気を記録。

    支援方法:

    • 就寝前の環境調整(照明・音・温度)

    • 日中の活動量を増やして自然な眠気を促す

    • 睡眠薬使用の有無を確認し、必要に応じて医師へ報告


    7. 気分の落ち込み・ストレスが見られる場合

    • 観察ポイント:表情・言動の変化、元気の有無を見守る。

    支援方法:

    • 気持ちを受け止める傾聴

    • 趣味活動や交流の機会を提供

    • 必要に応じて心理士や主治医と連携


    まとめ

    福祉現場での免疫力低下サインの観察・支援は、

    • 日々の小さな変化に気づくこと

    • 記録を積み重ねること

    • 医療との連携を適切に行うこと

    が基本となります。

    利用者さん自身が「なんとなく調子が悪い」と訴えにくい場合もあるため、職員の観察眼と支援の工夫が健康維持のカギになります。


    次回は続編として、利用者さんだけでなく 福祉職員自身の免疫力を守るセルフケア に焦点を当てた記事を作成しました。

  • 免疫力が低下しているサインとは?

    私たちの体は、日々ウイルスや細菌などの外敵から守られています。

    しかし、生活習慣の乱れや加齢、ストレスなどによって免疫力が下がると、体はさまざまなサインを出し始めます。

    福祉の現場でも、利用者さんや職員の健康管理において「免疫力の低下を早めに気づくこと」がとても大切です。


    1. 風邪や感染症にかかりやすくなる

    • ちょっとした気温差で風邪をひく

    • インフルエンザや胃腸炎などが流行するとすぐに感染してしまう

    免疫力低下の最も分かりやすいサイン です。


    2. 傷や皮膚の治りが遅い

    • 転んだ後のすり傷がなかなか治らない

    • 褥瘡(床ずれ)の回復が遅い

    免疫細胞の働きが弱まっている可能性があります。


    3. 疲れやすい・倦怠感が続く

    • 休んでも疲れが取れない

    • 体がだるく、やる気が出ない

    慢性的な疲労は、免疫力が落ちているサインのひとつです。


    4. 口内炎やヘルペスが繰り返し出る

    • 口の中に何度も口内炎ができる

    • 唇にヘルペスが再発する

    免疫機能が低下すると、潜伏していたウイルス が活動を始めます。


    5. 腸の不調(便秘・下痢)

    • お腹の調子が整わない

    • 便秘や下痢を繰り返す

    腸は「免疫の要」と呼ばれるほど大事な臓器。腸内環境の乱れは免疫低下のサインです。


    6. 睡眠の質の低下

    • 夜中に何度も目が覚める

    • 眠っても疲れが取れない

    睡眠不足は免疫細胞の回復を妨げ、免疫低下の悪循環を生みます。


    7. 気分の落ち込み・ストレス過多

    • なんとなく憂うつ

    • 不安や緊張が続く

    精神的なストレスは自律神経を乱し、免疫を大きく下げます。


    まとめ

    免疫力が低下しているときのサインは、

    • 風邪や感染症にかかりやすい

    • 傷や皮膚の治りが遅い

    • 慢性的な疲労や倦怠感

    • 口内炎やヘルペスの再発

    • 腸の不調

    • 睡眠の質の低下

    • 気分の落ち込み

    といった形で現れます。

    「なんとなく調子が悪い」と感じるときは、免疫力の低下が隠れているかもしれません。

    早めに生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。


    次回は続編として、今回まとめた 「免疫力低下のサイン」 を、福祉現場でどのように観察し、支援につなげていくかに焦点をあてた記事を作成しました。

    福祉現場での「免疫力低下サイン」の観察と支援のポイント

  • 免疫機能を高めるためにできる生活習慣

    私たちの体を病気から守ってくれる免疫機能。

    しかし、ストレスや生活リズムの乱れ、加齢などによって免疫力は低下してしまいます。福祉の現場でも「風邪をひきやすい」「なかなか回復しない」といった方がおり、その背景には免疫機能の低下が関わっていることも少なくありません。

    では、免疫を高めるためにはどのような生活習慣が大切なのでしょうか?


    1. 栄養バランスの取れた食事

    • たんぱく質(肉・魚・卵・大豆) … 免疫細胞の材料になる

    • ビタミンC(野菜・果物) … 白血球の働きをサポート

    • ビタミンD(魚・きのこ・日光浴) … 免疫力を調整する

    • 発酵食品(納豆・ヨーグルト・漬物) … 腸内環境を整え、免疫の約7割を担う腸を元気にする

    偏食を避け、「主食・主菜・副菜」を意識するだけでも免疫力はアップします。


    2. 質の良い睡眠

    • 睡眠中に分泌される 成長ホルモンやメラトニン は免疫機能を整える

    • 睡眠不足は白血球の働きを弱め、感染症にかかりやすくなる

    • 高齢者や福祉施設の利用者さんは 昼夜逆転や中途覚醒 に注意が必要

    規則正しい睡眠リズムを整えることが免疫力の回復につながります。


    3. 適度な運動

    • 軽いウォーキングや体操は血流を促し、免疫細胞が体内を巡りやすくなる

    • 運動不足 → 免疫低下

    • 過度な運動 → 逆に免疫力を下げてしまう

    福祉施設では、無理のない範囲で「毎日の体操」や「散歩」を取り入れることが大切です。


    4. ストレス管理

    • 強いストレスは自律神経を乱し、免疫機能を抑制する

    • 笑いやリラックスは免疫細胞を活性化することが研究でわかっています

    「利用者さんが安心できる環境」「人との交流の機会」も免疫力の維持に役立ちます。


    5. 感染予防の基本

    免疫力を高めることに加えて、外からの感染を防ぐ工夫 も重要です。

    • 手洗い・うがい・マスクの活用

    • 予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌など)

    • 室内の湿度管理

    免疫を守る土台として、日常の予防行動を徹底しましょう。


    まとめ

    免疫機能を高めるためには、特別なことよりも 日々の生活習慣を整えること が大切です。

    • バランスの良い食事

    • 良質な睡眠

    • 適度な運動

    • ストレスのケア

    • 基本的な感染予防

    これらを積み重ねることで、利用者さんも職員も元気に過ごすことができます。


    今回の「免疫機能を高める生活習慣」の続編として、次回は 「免疫力が低下しているサイン」 の記事です!

  • 細菌感染とウイルス感染の違いとは?わかりやすく解説!

    「風邪をひいた」「感染症にかかった」というとき、その原因は大きく分けて 細菌 と ウイルス の2種類があります。

    しかし、この2つはまったく性質が異なるもので、治療の方法も大きく変わってきます。今回は、細菌感染とウイルス感染の違いをわかりやすく整理してみましょう。


    1. 細菌とは?

    • 大きさ:1ミクロン(1/1000ミリ)程度。顕微鏡で見ることができる。

    • 特徴:自分で栄養を取り込み、分裂して増えることができる「生き物」。

    • 例:大腸菌、ブドウ球菌、結核菌など。

    つまり細菌は「自分で生きていける」存在です。人間や動物の体内だけでなく、土や水の中など自然界のあらゆる場所に存在しています。


    2. ウイルスとは?

    • 大きさ:細菌よりずっと小さく、0.02〜0.2ミクロン程度。

    • 特徴:自分だけでは増えられず、生物の細胞に入り込み、その仕組みを利用して増える。

    • 例:インフルエンザウイルス、コロナウイルス、ノロウイルスなど。

    ウイルスは「単独では生きられない」存在です。細胞に入り込んでコピーをつくらせることでしか増えることができません。


    3. 感染の症状の違い

    細菌感染

    ・高熱が続く

    ・膿がたまる

    ・のどの強い痛みや尿路感染など、局所的な症状が出やすい

    ウイルス感染

    ・発熱や倦怠感、鼻水や咳など全身に広がることが多い

    ・特効薬が少なく、自然に免疫で治る場合が多い

    ただし症状だけで「細菌かウイルスか」を見分けるのは難しく、医師の診断が必要です。


    4. 治療法の違い

    • 細菌感染 → 抗生物質(抗菌薬)が有効

    例:肺炎、膀胱炎、化膿した傷口など

    • ウイルス感染 → 抗生物質は効かない

    例:風邪、インフルエンザ、新型コロナなどは、体の免疫が戦うのを助ける対症療法が中心。特定の薬(抗ウイルス薬)がある場合もある。


    5. 予防のポイント

    細菌・ウイルス共通

    ・手洗い・うがい

    ・十分な睡眠と栄養で免疫力を保つ

    ・換気やマスクでの飛沫予防

    ウイルス特有の予防

    ・ワクチン接種(インフルエンザや新型コロナなど)


    まとめ

    • 細菌:自分で増える「生き物」。抗生物質が効く。

    • ウイルス:細胞に入り込んで増える存在。抗生物質は効かない。

    • 感染症の治療法や予防法は原因によって大きく異なる ため、自己判断せず、医師に相談することが大切です。


    以下の記事も合わせて読んで頂くと理解が深まると思います!

    福祉領域における血液検査結果の「WBC」と「CRP」の重要性とは?

  • 誤嚥性肺炎とは?予防のためにできること

    高齢者や障害のある方の健康を大きく左右する病気のひとつに「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」があります。

    介護の現場ではよく耳にしますが、どのような病気で、どんな予防ができるのでしょうか?


    誤嚥性肺炎とは?

    「誤嚥」とは、本来は胃に送られるべき食べ物や飲み物、さらには唾液や胃液が 誤って気管や肺に入ってしまうこと を指します。

    このとき口の中の細菌も一緒に肺へ入ってしまい、炎症を起こすのが「誤嚥性肺炎」です。

    特に高齢者では、

    嚥下機能(飲み込む力)の低下

    • 免疫力の低下

    • 口腔内の細菌増加

    が重なり、発症しやすくなります。


    誤嚥性肺炎が起こりやすい場面

    • 食事中にむせてしまうとき

    • 水分を飲んだときに咳き込むとき

    • 夜間の睡眠中(唾液や胃液の逆流による)

    見過ごされやすいのは「気づかない誤嚥(不顕性誤嚥)」です。

    むせなくても少しずつ肺に入り込み、繰り返すうちに肺炎につながるケースがあります。


    予防のためにできること

    1. 姿勢の工夫

    • 椅子に深く腰掛け、背中をまっすぐに

    • 顎を軽く引いて飲み込む

    • 食後30分は横にならず、座って休む

    2. 食事の工夫

    • とろみをつける(水やお茶などはむせやすい)

    • 柔らかく飲み込みやすい調理法にする

    • 一口の量を少なくする

    3. 口腔ケア

    • 毎食後の歯磨きやうがい

    • 義歯の洗浄

    • 専門職(歯科衛生士など)による口腔ケア

    口の中を清潔に保つことは、肺炎予防に直結します。

    4. 嚥下リハビリ

    • 発声練習(パ・タ・カ・ラ体操)

    • 舌や頬の運動

    嚥下体操(首・肩のストレッチも有効)

    5. 全身の健康管理

    • 水分・栄養をしっかりとる

    • 運動習慣で体力を維持する

    • かかりつけ医やST(言語聴覚士)への相談


    誤嚥性肺炎を防ぐ意味

    誤嚥性肺炎は 入院・長期療養の原因 となるだけでなく、繰り返すことで生活の質を大きく下げてしまいます。

    しかし、日常のちょっとした工夫やケアによって、リスクを大きく減らすことができます。

    介護の現場では「むせ=危険サイン」ととらえ、本人の生活スタイルに合わせた支援を続けることが大切です。


    まとめ

    • 誤嚥性肺炎 は、誤って気管に入った食べ物や唾液の細菌で肺炎が起こる病気

    • 食事中だけでなく、睡眠中の「気づかない誤嚥」も要注意

    • 予防のポイントは 姿勢・食事形態・口腔ケア嚥下リハビリ・健康管理

    • 介護現場での支援は「安心して食べること」「生活の質を守ること」につながる

  • 介護福祉の現場で大切な「摂食」と「嚥下」について

    食べることは、誰にとっても生きる喜びのひとつです。

    しかし高齢になると、噛む力や飲み込む力が弱くなり、「うまく食べられない」「むせてしまう」といった問題が起こることがあります。介護の現場では「摂食(せっしょく)」と「嚥下(えんげ)」という専門的な言葉をよく使います。ここではその意味と支援の工夫についてご紹介します。


    摂食とは?

    「摂食」とは、食べ物を口に運び、噛んで、飲み込む一連の動作を指します。

    スプーンで口に入れる、舌で食べ物をまとめる、奥歯で噛む、といった一つひとつの動きが含まれます。

    高齢者や障害のある方の場合、以下のような課題が起こりやすくなります。

    • 手が震えてうまく口に運べない

    • 入れ歯が合わず噛めない

    • 食欲が落ちてしまう

    こうした「食べる力」の支援は、介護職員だけでなく、歯科や栄養士とも連携しながら行います。


    嚥下とは?

    「嚥下」とは、口の中の食べ物や飲み物を喉を通して胃に送り込む働きです。

    実は嚥下の動きはとても複雑で、舌・喉・食道が連携して初めてスムーズに行われます。

    嚥下機能が弱まると、以下のようなリスクが高まります。

    • 食べ物や水分が気管に入ってしまう(誤嚥)

    誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)

    • 栄養不足や脱水

    このため介護現場では「安全に飲み込めるか」を常に観察し、適切な食形態や姿勢を工夫することが欠かせません。


    介護現場での工夫

    摂食・嚥下に課題のある方への支援は、一人ひとりに合わせた工夫が必要です。

    1. 食事形態の工夫

    • きざみ食:噛む力が弱い人向けに小さく刻む

    • ミキサー食:なめらかにして飲み込みやすくする

    • とろみ調整:水分にとろみをつけて誤嚥を防ぐ

    2. 姿勢の工夫

    • 椅子に深く腰掛けて少し前かがみにする

    • 顎を軽く引いて飲み込む(誤嚥予防)

    3. リハビリの工夫

    • 嚥下体操(舌や頬を動かす練習)

    • 発声練習(「パ・タ・カ・ラ体操」など)


    摂食・嚥下支援の大切さ

    摂食・嚥下は「栄養をとる」だけでなく、**食べる楽しみ・生活の質(QOL)**にも大きく関わります。

    介護福祉の現場では、本人が「最後まで自分らしく食べられるように」支えることが重要な役割です。


    まとめ

    • 摂食=食べ物を口に入れ、噛み、まとめること

    • 嚥下=口から喉・食道を通って胃に送り込むこと

    • 支援では「食形態」「姿勢」「リハビリ」の工夫が大切

    • 誤嚥や栄養不足を防ぎ、安心して「食べる喜び」を守ることが介護福祉の使命


    「摂食・嚥下」に続くシリーズ記事として、次回は介護福祉の現場で大きなテーマとなる誤嚥性肺炎について、わかりやすくまとめた記事を作りました。

    (さらに…)
  • てんかんとともに働く・学ぶために

    職場や学校での支援のポイント

    1. てんかんのある人が安心できる環境づくり

    てんかんは多くの場合、薬でコントロールできる病気です。本人が安心して力を発揮するためには、周囲の理解と配慮が欠かせません。

    「発作は突然起きることがある」ことを前提に、あらかじめ対応を共有しておくことが安心につながります。


    2. 学校での支援の工夫

    発作時の対応をマニュアル化する

     担任や保健室の先生だけでなく、周囲の児童生徒やクラスメイトにも「発作があったときは慌てず見守る」ことを伝えておく。

    体調管理をサポートする

     睡眠不足やストレスは発作の引き金になるため、無理のない学習環境を整える。テストや行事の前は休憩を取りやすくするなど柔軟な対応が大切。

    参加の機会を広げる

    体育や校外学習も、危険がなければできる限り参加させる。過剰に制限するのではなく、安全を確保した上でチャレンジできるようにすることが本人の自信につながります。


    3. 職場での支援の工夫

    発作への理解を共有する

     直属の上司や同僚に「発作が起きた場合の対応」を伝えておくと安心。職場の安全管理の一環として事前に共有しておくとスムーズです。

    勤務環境の調整

     夜勤や極端な残業は発作を誘発することがあるため、勤務シフトの配慮が必要になる場合があります。

    本人の強みを活かす

    てんかんがあるからといって、業務能力が制限されるわけではありません。むしろ、集中力や責任感を発揮して活躍する方も多くいます。仕事内容を制限するのではなく、本人の得意を伸ばせる配置を意識することが大切です。


    4. 周囲の人ができること

    • 発作があっても「怖がらない・特別視しすぎない」

    • 正しい対応を知って「安心して支えられる人」になる

    • 偏見や誤解を減らし、自然に一緒に過ごせる環境をつくる

    これらの姿勢が、本人にとって大きな安心と自信になります。


    5. まとめ

    てんかんは「支援があれば十分に学び・働ける病気」です。

    学校や職場で周囲が正しい知識を持ち、安心して力を発揮できる環境を整えることが、本人だけでなく組織全体の成長にもつながります。

    「理解と安心のある場」をつくることが、社会全体にとっての大切な一歩です。

  • てんかん発作とは?知っておきたい基礎知識と日常での関わり方

    1. てんかんってどんな病気?

    てんかんは、脳の神経が一時的に異常な電気活動を起こすことで発作が繰り返される病気です。世界人口のおよそ1%に見られるといわれ、決して珍しい病気ではありません。

    「発作=倒れる」というイメージを持つ方も多いですが、実際には発作のタイプはさまざまで、数秒間ぼーっとするだけの軽いものから、全身が硬直したりけいれんしたりするものまで幅があります。


    2. てんかん発作の主な種類

    てんかん発作は大きく「部分発作」と「全般発作」に分けられます。

    部分発作(焦点発作)

     脳の一部分で異常が起きる発作。意識があるまま体の一部がピクピクすることもあれば、短時間意識がぼんやりすることもあります。

    全般発作

    脳全体に異常が広がる発作。突然倒れて全身が硬直・けいれんする「強直間代発作」や、数秒間意識が飛ぶ「欠神発作」などがあります。

    発作の見え方が人によって大きく異なるため、「てんかん=こういう症状」と一概には言えません。


    3. 発作が起きたときの対応

    てんかん発作は突然起こることがありますが、正しい対応を知っていれば落ち着いて行動できます。

    • あわてず、安全を確保する(周囲の危険物をどける)

    • 無理に体を押さえつけない

    • 口に物を入れない(舌を噛むのを防ぐために物を入れるのは危険)

    • 発作の時間を測る(5分以上続く場合は救急要請)

    • 発作が収まったら横向きにして呼吸を確保する

    ほとんどの場合、発作は数分以内で自然に治まります。大切なのは「見守り」と「安全の確保」です。


    4. 治療と日常生活

    てんかんは薬による治療で多くの場合コントロールが可能です。発作が安定していれば学校や職場、スポーツ、旅行などもふつうに楽しめます。

    ただし、睡眠不足や飲酒、強いストレスなどが発作のきっかけになることがあるため、生活リズムを整えることが大切です。


    5. 偏見をなくして支え合う社会へ

    「てんかん」という言葉にまだ偏見や誤解が残っているのも現実です。しかし正しい知識を知れば、「怖い病気」ではなく「コントロールできる病気」だと理解できます。

    周囲の人が発作への対応を知り、安心して過ごせる環境を整えることは、本人にとっても大きな力になります。


    まとめ

    てんかんは誰にでも起こり得る病気で、正しい対応を知っていれば安心です。もし身近で発作が起きても、落ち着いて「安全を守る」ことを意識してください。そして、偏見ではなく理解とサポートで支えていける社会を目指していきましょう。


    次回は 「職場や学校でのてんかんのある人への支援方法」 に焦点をあてた続編の記事を用意しました。

    (さらに…)