カテゴリー: 心技体の技

  • 介護福祉の現場で大切な「摂食」と「嚥下」について

    食べることは、誰にとっても生きる喜びのひとつです。

    しかし高齢になると、噛む力や飲み込む力が弱くなり、「うまく食べられない」「むせてしまう」といった問題が起こることがあります。介護の現場では「摂食(せっしょく)」と「嚥下(えんげ)」という専門的な言葉をよく使います。ここではその意味と支援の工夫についてご紹介します。


    摂食とは?

    「摂食」とは、食べ物を口に運び、噛んで、飲み込む一連の動作を指します。

    スプーンで口に入れる、舌で食べ物をまとめる、奥歯で噛む、といった一つひとつの動きが含まれます。

    高齢者や障害のある方の場合、以下のような課題が起こりやすくなります。

    • 手が震えてうまく口に運べない

    • 入れ歯が合わず噛めない

    • 食欲が落ちてしまう

    こうした「食べる力」の支援は、介護職員だけでなく、歯科や栄養士とも連携しながら行います。


    嚥下とは?

    「嚥下」とは、口の中の食べ物や飲み物を喉を通して胃に送り込む働きです。

    実は嚥下の動きはとても複雑で、舌・喉・食道が連携して初めてスムーズに行われます。

    嚥下機能が弱まると、以下のようなリスクが高まります。

    • 食べ物や水分が気管に入ってしまう(誤嚥)

    誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)

    • 栄養不足や脱水

    このため介護現場では「安全に飲み込めるか」を常に観察し、適切な食形態や姿勢を工夫することが欠かせません。


    介護現場での工夫

    摂食・嚥下に課題のある方への支援は、一人ひとりに合わせた工夫が必要です。

    1. 食事形態の工夫

    • きざみ食:噛む力が弱い人向けに小さく刻む

    • ミキサー食:なめらかにして飲み込みやすくする

    • とろみ調整:水分にとろみをつけて誤嚥を防ぐ

    2. 姿勢の工夫

    • 椅子に深く腰掛けて少し前かがみにする

    • 顎を軽く引いて飲み込む(誤嚥予防)

    3. リハビリの工夫

    • 嚥下体操(舌や頬を動かす練習)

    • 発声練習(「パ・タ・カ・ラ体操」など)


    摂食・嚥下支援の大切さ

    摂食・嚥下は「栄養をとる」だけでなく、**食べる楽しみ・生活の質(QOL)**にも大きく関わります。

    介護福祉の現場では、本人が「最後まで自分らしく食べられるように」支えることが重要な役割です。


    まとめ

    • 摂食=食べ物を口に入れ、噛み、まとめること

    • 嚥下=口から喉・食道を通って胃に送り込むこと

    • 支援では「食形態」「姿勢」「リハビリ」の工夫が大切

    • 誤嚥や栄養不足を防ぎ、安心して「食べる喜び」を守ることが介護福祉の使命


    「摂食・嚥下」に続くシリーズ記事として、次回は介護福祉の現場で大きなテーマとなる誤嚥性肺炎について、わかりやすくまとめた記事を作りました。

    (さらに…)
  • 強度行動障害とは?~支援が必要な“行動の困難さ”を理解する~

    1. 強度行動障害とは

    強度行動障害とは、知的障害自閉症スペクトラム障害などを持つ人の中で、日常生活に強い困難をもたらす行動上の特徴が見られる状態を指します。

    単なる「困った行動」ではなく、本人の安心・安全や周囲の生活にも大きな影響を与えるため、専門的な支援が必要とされています。


    2. 具体的にどんな行動?

    強度行動障害には、次のような行動が含まれることが多いです。

    • 自傷行為:頭を叩く、皮膚をかきむしる、噛む など

    • 他害行為:人を叩く、物を壊す、強く押す など

    • 常同行動:同じ動作を繰り返す、物を並べ続ける など

    • パニック行動:大声を出す、急に走り出す、暴れる など

    • 著しい拒否行動:食事や着替えを強く拒否する、移動を嫌がる など

    👉 これらは本人が「つらさ」や「不安」「感覚の過敏・鈍麻」を表現しているサインとも考えられます。


    3. なぜ起こるの?

    強度行動障害は、本人の特性や環境との相互作用の中で現れます。

    背景には次のような要因が重なっていることが多いです。

    • コミュニケーションの困難

    → 言葉で伝えられず、行動で気持ちを表している

    • 感覚過敏・感覚鈍麻

    → 音や光に過敏、または痛みを感じにくいなど

    • 生活リズムの乱れや環境の変化

    → 予定の変更や人混みが苦手

    • ストレスや不安

    → 頼れる人がいない、理解されない不安


    4. 支援の考え方

    強度行動障害のある方に対しては、行動そのものを「抑え込む」のではなく、行動の背景を理解し、安心して暮らせる環境を整えることが大切です。

    主な支援のポイント

    • 原因やきっかけを分析する

    (行動が起きる前の状況・環境を記録する)

    • 安心できる環境づくり

    (静かな場所、予測可能なスケジュール)

    • コミュニケーション手段を増やす

    (絵カード、ジェスチャー、ICTの活用)

    • 本人の強みや好きな活動を活かす

    (音楽や運動など安心できる活動を取り入れる)

    • 専門職や支援制度の活用

    行動援護短期入所、強度行動障害支援者養成研修を受けたスタッフの配置)


    5. 社会の取り組み

    日本では、強度行動障害のある方への支援を広げるために、以下のような制度や研修があります。

    • 強度行動障害支援者養成研修

    → 支援者が専門的な知識・技術を学ぶための研修

    行動援護サービス

    → 外出時の安全確保や日常生活の支援を行う制度

    • 地域生活支援拠点

    → 緊急時や在宅支援の受け皿になる仕組み


    まとめ

    • 強度行動障害とは、日常生活に強い影響を与える行動上の困難さを持つ状態。

    • 背景には「伝えたい気持ち」や「感覚特性」が隠れていることが多い。

    • 支援は「行動を抑える」よりも「安心できる環境づくり」と「理解」が重要。

    • 専門的な研修や制度が整いつつあり、地域で暮らすための支えが広がっている。

  • ガイドヘルパーと行動援護サービスとは?~外出のサポートと安全を支える福祉サービス~

    1. ガイドヘルパー(移動支援)とは

    ガイドヘルパーとは、障害のある方が安全に外出できるようにサポートする「移動支援」のサービスを行うヘルパーのことです。

    障害の特性や体の状況に応じて、外出時に付き添い、安心して地域での生活を送れるように支えます。

    主な支援内容

    • 買い物や役所への手続きの付き添い

    • 病院への通院サポート

    • 公共交通機関の利用のサポート(電車・バスなど)

    • 趣味・社会参加の外出(映画館、スポーツ観戦、習い事など)

    対象となる方

    • 視覚障害のある方(道案内や段差の注意などが必要な場合)

    • 肢体不自由のある方(車いす利用者など)

    知的障害や精神障害があり、外出時に見守りや支援が必要な方

    「地域で安心して過ごすための生活支援」がガイドヘルパーの役割です。


    2. 行動援護とは

    行動援護は、知的障害や精神障害などにより「自分ひとりでの行動に危険が伴う方」への専門的な外出支援サービスです。

    ガイドヘルパーと似ていますが、より専門的で「安全確保」や「行動の理解」に力を入れている点が特徴です。

    主な支援内容

    • 外出先での事故や迷子を防ぐための見守り・声かけ

    • 突発的な行動や危険行為への対応(急に走り出す、物に触るなど)

    • 交通機関や施設利用時の安全確保

    • 日常生活に必要な外出(買い物・通院など)や余暇活動への参加支援

    対象となる方

    強度行動障害のある方

    • 知的障害や発達障害により、外出時に常に安全確保が必要な方

    • 精神障害により混乱や危険が想定される方

    **「行動面でのリスクを理解し、専門的に対応する外出支援」**が行動援護の特徴です。


    3. ガイドヘルパーと行動援護の違い

    ガイドヘルパー(移動支援)

    対象:身体・知的・精神など幅広い

    主な目的:外出の支援・生活参加のサポート

    支援者:ガイドヘルパー(養成研修修了者)

    サポートの深さ:比較的日常的な支援

    行動援護
    対象:特に知的障害・精神障害で行動上のリスクがある方
    主な目的:外出時の安全確保・行動支援
    支援者:行動援護従業者(専門研修修了者)
    サポートの深さ:専門性が高く、リスク管理が必要


    4. 利用するには?

    これらのサービスは「障害福祉サービス」として自治体が提供しています。

    利用するには、次のような流れが一般的です。

    1. 市区町村の障害福祉課に相談

    2. サービス利用の申請(障害者手帳や診断書が必要な場合あり)

    3. ケアマネジャーや相談支援専門員と計画を立てる

    4. サービス事業所と契約し、利用開始


    まとめ

    • ガイドヘルパー(移動支援)は、外出の付き添いや日常生活の外出支援を行うサービス。

    • 行動援護は、外出時に行動のリスクがある方に対して、より専門的に安全を確保するサービス。

    • どちらも「地域で安心して生活するため」に大切な役割を持っています。

    外出に不安を感じている方やご家族は、まずは自治体や相談支援専門員に相談してみると良いでしょう。

  • 障害者手帳と等級のしくみをわかりやすく解説

    日本には、障害のある方が日常生活や社会参加をよりスムーズに行えるように「障害者手帳」という制度があります。手帳は3種類に分かれており、それぞれ対象や等級の仕組みが異なります。今回は、知的障害・身体障害・精神障害に関する手帳について、わかりやすくご紹介します。


    1. 障害者手帳とは?

    障害者手帳は、障害のある方が福祉サービスや各種割引を受けるための公的な証明書です。手帳を持つことで、医療や交通、税金などの面で支援が得られるほか、就労支援や福祉サービスを受けやすくなります。

    現在、大きく分けて以下の3種類があります。

    • 身体障害者手帳(身体障害のある方)

    • 療育手帳(知的障害のある方)

    • 精神障害者保健福祉手帳(精神障害のある方)


    2. 身体障害者手帳

    対象

    視覚・聴覚・音声言語機能・肢体不自由・心臓や腎臓などの内部障害など、身体に一定の障害がある方。

    等級

    • 1級〜6級(障害の程度が重いほど等級は低い番号になります)

    • 1級・2級:重度

    • 3級〜6級:中度〜軽度

    受けられる支援の例

    • 所得税や住民税の控除

    • 公共交通機関の割引

    • NHK受信料の減免

    • 福祉サービス利用(ホームヘルパー、日常生活用具の給付など)


    3. 療育手帳(知的障害)

    対象

    知的発達に遅れがあり、日常生活や社会生活において特別な支援を必要とする方。

    等級

    全国で統一されていませんが、多くの自治体では以下のように区分されています。

    • A(重度):生活全般にわたる支援が必要

    • B(中度・軽度):ある程度の自立は可能だが支援が必要

    (自治体によって「A1・A2」「B1・B2」とさらに細分化される場合があります)

    受けられる支援の例

    障害福祉サービスの利用

    • 公共交通機関の割引

    • 特別児童扶養手当、各種助成制度

    • 就労支援や生活支援サービス


    4. 精神障害者保健福祉手帳

    対象

    統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害、てんかんなど、長期にわたり日常生活や社会生活に支障をきたす精神障害のある方。

    等級

    • 1級:日常生活に常時介助が必要

    • 2級:日常生活や社会生活に著しい制約がある

    • 3級:社会生活に一定の制約がある

    受けられる支援の例

    • 所得税・住民税の控除

    • 医療費の助成(自立支援医療制度との併用)

    • 公共料金や交通機関の割引

    就労支援・職場での合理的配慮の対象


    5. 手帳の申請方法

    1. 医師の診断書を準備

    障害の種類に応じた指定医師の診断書が必要です。

    2. 市区町村の福祉窓口で申請

    写真・印鑑・診断書を持参して申請します。

    3. 審査を経て交付

    数か月後、手帳が交付されます。


    6. 手帳を持つメリットと注意点

    メリット

    • 経済的な負担が軽くなる

    • 生活や就労の支援が受けやすくなる

    • 社会参加の機会が広がる

    注意点

    • 等級や対象は医師の診断や自治体の判断によるため、更新時に変わることがあります。

    • 申請や利用には本人の意思確認が重視されます。


    まとめ

    障害者手帳は、障害のある方が安心して生活し、社会に参加するための大切な制度です。

    • 身体障害者手帳:1〜6級

    • 療育手帳(知的障害):重度〜軽度(A・B区分)

    • 精神障害者保健福祉手帳:1〜3級

    それぞれに応じたサポートがあり、手帳を取得することで生活の幅が広がります。もし申請を検討している場合は、まず自治体の福祉窓口や専門機関に相談してみることをおすすめします。

  • 障害者雇用制度とは?働き方を支える仕組みと現状

    障害のある人が社会の一員として働き、生活の基盤を築くためには、雇用の場が欠かせません。その仕組みを法律で定めているのが 「障害者雇用制度」 です。

    今回は、制度の概要や目的、現状の課題について解説します。


    1. 障害者雇用制度の目的

    障害者雇用制度は、障害のある人が社会で自立した生活を送れるよう、働く機会を確保することを目的としています。

    背景には、障害があることで就職や職場定着が難しい現実があり、「平等な就労の機会」を保障するために法制度が整えられてきました。


    2. 法的根拠:「障害者雇用促進法」

    障害者雇用制度の基盤は 障害者雇用促進法(1960年制定、以降改正を重ねている)です。

    この法律では、以下の内容が定められています。

    • 事業主には一定割合の障害者を雇用する義務(法定雇用率)がある

    • 雇用義務に違反した場合、納付金を支払う仕組み

    • 障害者を雇用した企業には助成金や支援制度あり

    • 障害者が安心して働ける職場環境整備を推進


    3. 法定雇用率とは?

    企業や官公庁には「全労働者のうち一定割合以上を障害者にする」という雇用義務が課されています。

    • 民間企業:2.5%(2024年度現在、今後段階的に引き上げ予定)

    • 国・地方公共団体:2.8%

    • 教育委員会:2.5%

    例えば、従業員100人の会社であれば、2〜3人の障害者を雇用する必要があります。


    4. 障害者雇用の形態

    雇用のスタイルは多様で、一人ひとりの特性に応じた働き方が可能です。

    • 一般企業での雇用(オープン就労)

    • 特例子会社での雇用(大企業が障害者雇用を進めるために設立する子会社)

    • 福祉サービスを活用した就労(就労継続支援A型・B型事業所など)


    5. 支援の仕組み

    障害者が職場で安心して働けるよう、さまざまな支援制度があります。

    • ハローワークの専門援助部門(障害者専門の職業相談)

    • 障害者就業・生活支援センター:就労と生活を一体的にサポート

    • ジョブコーチ支援:職場に入り、働き方や人間関係の調整を支援

    • 助成金制度:設備改善や雇用継続のために事業主が利用可能


    6. 現状と課題

    • 障害者雇用者数は年々増加しており、2023年には過去最高を更新

    • しかし、中小企業での雇用が進みにくい現状がある

    • 「雇用率を満たすためだけの採用」にとどまるケースもある

    • 職場定着支援やキャリアアップの仕組みがまだ不足している


    まとめ

    • 障害者雇用制度は「障害者雇用促進法」に基づき、法定雇用率の達成を義務づけている

    • 働き方は一般企業・特例子会社・就労支援事業所など多様

    • 就労支援や助成金制度が整備されているが、職場定着や質の確保が課題

    障害者雇用は「法律で決められているから」だけではなく、社会の多様性を広げ、企業にとっても新しい力を得られる仕組みです。これからは「数の確保」から「働きやすさの確保」へと視点を広げることが求められています。

  • 障害者総合支援法とは?制度の目的とサービス内容をわかりやすく解説

    日本には、障害のある人が地域で安心して暮らしていくための仕組みとして、障害者総合支援法という法律があります。

    この制度は、障害のある人の生活を支えるために幅広いサービスを提供しており、福祉・医療・就労などを包括的にカバーしているのが特徴です。


    1. 障害者総合支援法の背景と目的

    もともと日本の障害福祉は、「身体障害者福祉法」「知的障害者福祉法」「精神保健福祉法」など、それぞれの障害ごとに制度が分かれていました。

    しかし、これでは横断的な支援が難しく、「障害の種類や原因にかかわらず利用できる仕組み」が求められました。

    そこで2013年に施行されたのが 障害者総合支援法 です。

    目的:

    • 障害のある人が自分らしく地域で暮らせるように支援する

    • 必要な福祉サービスを一元的に提供する

    • 医療・就労・地域生活をつなぐ包括的な仕組みをつくる


    2. 対象となる人

    障害者総合支援法の対象は幅広く、

    • 身体障害

    • 知的障害

    • 精神障害(発達障害を含む)

    • 難病等(対象疾病が定められている)

    「障害の種類」にとらわれず、支援が必要な人が対象となっています。


    3. 利用できる主なサービス

    障害者総合支援法では、大きく分けて「自立支援給付」と「地域生活支援事業」があります。

    (1)自立支援給付

    個人のニーズに応じて利用できるサービス。

    • 介護給付:生活介護短期入所重度訪問介護など

    • 訓練等給付:就労移行支援、就労継続支援A型・B型自立訓練など

    共同生活援助(グループホーム):地域での共同生活を支援

    (2)地域生活支援事業

    市区町村や都道府県が地域の実情に応じて行う事業。

    移動支援(外出の支援)

    • コミュニケーション支援(手話通訳など)

    • 日常生活用具の給付 など


    4. 利用の流れ

    障害者総合支援法のサービスを利用するには、以下のステップがあります。

    1. 市区町村の窓口に相談・申請

    2. サービス等利用計画の作成(相談支援専門員が関わる)

    3. 市区町村による審査・支給決定

    4. 事業所との契約・サービス利用開始

    契約制度になっており、利用者本人の選択が重視されています。


    5. 制度の特徴と課題

    特徴

    • 障害種別を超えて一元的に支援

    • 就労・生活・医療をトータルに支える

    • 利用者の自己決定を尊重

    課題

    • 地域によるサービス格差

    • 人材不足(特に福祉人材の確保)

    • 制度の分かりにくさ


    まとめ

    • 障害者総合支援法は、障害の種類や原因にかかわらず利用できる包括的な支援制度

    • 介護・就労・生活・地域支援など幅広いサービスがある

    • 利用者の自己決定を重視しながらも、地域格差や人材不足といった課題もある

    この法律は、障害のある人が「地域で自分らしく生きる」ことを支えるための基盤です。制度を正しく知り、活用することが、本人や家族の安心につながります。


    次回は「障害者雇用制度」について、制度の背景から仕組み、現状の課題までわかりやすくまとめました。今回の「障害者総合支援法」とつなげて読むと、「生活支援」から「社会参加・就労」への流れが理解できる構成になっています。

    (さらに…)
  • 障害者手帳の種類と利用できる制度とは?

    障害を持つ方やその家族にとって、生活を支える大きな仕組みのひとつが「障害者手帳」です。

    手帳を持つことで、医療・福祉サービスの利用や生活上の支援、割引制度などが受けられます。今回は、3種類の障害者手帳についてわかりやすく紹介します。


    1. 身体障害者手帳

    身体障害者手帳は、視覚・聴覚・肢体・内部臓器などの身体機能に障害がある方に交付されます。

    • 対象:視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、心臓・腎臓・呼吸器などの内部障害

    • 等級:1級〜6級(障害の程度によって区分)

    主な支援:

    • 医療費助成

    • 公共交通機関の割引

    • 税制上の優遇(所得税・住民税控除など)

    • 介護サービスの利用


    2. 療育手帳

    療育手帳は、知的障害がある方に交付される手帳です。

    自治体によって名称や区分が異なる場合があります。

    • 対象:知的障害のある方(18歳未満・成人ともに対象)

    • 等級:軽度〜最重度(自治体ごとに区分名称が異なることも)

    主な支援:

    福祉サービス(生活介護・就労支援など)の利用

    • 公共料金や交通機関の割引

    • 税制上の優遇

    • 医療費助成


    3. 精神障害者保健福祉手帳

    精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患がある方に交付されます。

    • 対象:統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害、発達障害による二次的な精神症状など

    • 等級:1級〜3級

    主な支援:

    • 所得税・住民税の控除

    • 交通機関や公共施設の割引

    • 障害者雇用枠での就労支援

    • 自立支援医療制度の利用


    4. 手帳を持つメリット

    障害者手帳を持つことで、本人や家族の生活を支える制度にアクセスしやすくなります。

    • 経済的な支援(医療費助成、税控除、割引制度)

    • 社会参加の促進(交通機関の利用、文化施設の割引など)

    就労支援や生活支援サービスにつながる

    「自分の障害は対象になるのか?」という点については、医師の診断や市区町村の窓口で確認することが大切です。


    まとめ

    • 身体障害者手帳:視覚・聴覚・肢体・内部障害に対応

    • 療育手帳:知的障害に対応

    • 精神障害者保健福祉手帳:精神疾患に対応

    • 手帳を持つことで、医療費助成・福祉サービス・割引制度など幅広い支援が受けられる

    障害者手帳は「本人の生活の質を高めるためのパスポート」とも言えます。支援を受けることにためらいを感じる方もいますが、制度を活用することは自立や社会参加につながる大切な一歩です。

  • 知的障害・身体障害・精神障害とは?それぞれの特徴と理解のポイント

    私たちの社会にはさまざまな障害を持つ人が暮らしています。中でも「知的障害」「身体障害」「精神障害」という3つの区分は、法律や福祉制度でもよく使われるものです。この記事では、それぞれの特徴や支援の考え方を分かりやすく紹介します。


    1. 知的障害とは

    知的障害とは、生まれつきや発達の過程で知的な発達に遅れがあるため、学習や日常生活に困難が生じる状態を指します。

    主な特徴:

    • 学習に時間がかかる

    • 抽象的なことの理解が難しい

    • 生活や仕事でサポートが必要な場面がある

    支援のポイント:

    • わかりやすい説明や、繰り返しの学習が効果的

    • 得意なことを活かすことで自信や役割を持ちやすい

    • 地域や職場での理解が大切

    知的障害といっても程度や特性はさまざまで、一人ひとりの個性に合わせた支援が必要です。


    2. 身体障害とは

    身体障害とは、体の一部に障害があり、日常生活や社会生活に支障が出る状態を指します。

    主な例:

    • 視覚障害(目の見えにくさ)

    • 聴覚障害(耳の聞こえにくさ)

    • 肢体不自由(手足の動きの制限)

    • 内部障害(心臓や腎臓などの機能障害)

    支援のポイント:

    • 補助具や福祉機器(車椅子、補聴器など)の利用

    • バリアフリー環境の整備

    • 周囲の人の理解や声かけ

    身体障害は外から見てわかる場合もあれば、内部障害のように見た目では気づかれにくいものもあります。そのため「見えない障害」にも配慮することが大切です。


    3. 精神障害とは

    精神障害は、心の働きに関わる障害で、日常生活や社会生活に困難が生じる状態をいいます。

    主な例:

    • 統合失調症

    • 双極性障害(躁うつ病)

    • うつ病

    • 不安障害 など

    支援のポイント:

    • 医療やカウンセリングによる治療

    • 生活リズムやストレス対処の支援

    • 社会の理解と偏見をなくす取り組み

    精神障害は症状が目に見えにくいため、誤解や偏見が生まれやすい分野でもあります。しかし、適切な治療やサポートがあれば、多くの人が自分らしく暮らし、働くことができます。


    まとめ

    • 知的障害:学習や生活に支援が必要なことがある

    • 身体障害:体の機能に制限があり、補助具や環境整備が大切

    • 精神障害:心の病気や不調による困難があり、理解と治療が重要

    いずれも「一人ひとりがどんな支援を必要としているか」が大切で、障害そのものではなくその人の暮らしや思いに目を向けることが求められます。

    今回の「知的障害・身体障害・精神障害」に続き、最近関心が高まっている「発達障害」に関する記事も読んで頂けると理解が深まっていくと思います!

  • TEACCH(ティーチ)プログラムとは?自閉症の人を支える教育の工夫

    自閉症のある子どもや大人の支援方法のひとつに、世界的に知られている 「TEACCH(ティーチ)プログラム」 があります。

    名前だけ聞くとむずかしそうに感じますが、実は「安心して生活しやすくなる工夫」をまとめた方法です。

    この記事では、TEACCHプログラムの基本をわかりやすく紹介します。


    TEACCHプログラムってなに?

    TEACCHは、1970年代にアメリカで始まったプログラムで、

    自閉症の特性を変える」のではなく、その人に合わせて環境や関わり方を工夫することを目的としています。

    たとえば、

    • 「何を」「いつ」「どこで」やるのかをはっきり示す

    • 言葉だけでなく、写真や絵で伝える

    • 得意なことを伸ばし、苦手なことは工夫でサポートする

    といったシンプルな工夫を重ねていきます。


    どんな工夫をするの?

    1. 見通しをわかりやすくする

    自閉症のある人は、予定がはっきりしないと不安になりやすいことがあります。

    そこで、1日の流れを絵カードや表で示すと安心して行動できるようになります。

    2. 視覚的に伝える

    「言葉だけでは伝わりにくい」ことも、写真やイラストを使うと理解しやすい場合があります。

    例:片づける場所を写真でラベル表示しておく など。

    3. 個性に合わせる

    一人ひとり得意・不得意が違うため、マニュアル通りではなく、その人に合った形に工夫します。

    「無理に苦手を克服する」よりも「得意を伸ばす」発想が大切です。


    TEACCHで期待できる効果

    • 予定が見えて安心できる

    • 自分で活動を進められるようになる

    • 混乱やパニックが減る

    • 家や学校、福祉の場など、どこでも使える


    日本での取り入れ方

    日本でも、

    • 特別支援学校

    • 放課後等デイサービスや児童発達支援

    就労支援生活介護

    • 家庭での生活(宿題、片づけ、歯磨きの習慣づけなど)

    といったさまざまな場面で活用されています。


    まとめ

    TEACCHプログラムは、「わかりやすさ」を工夫することで生活を安定させ、自分らしく成長できるように支える方法です。

    専門的な道具がなくても、ちょっとしたアイデア(予定表、写真カード、部屋の使い分けなど)から始められるのも魅力です。

    もし身近に自閉症の特性をもつ方がいれば、TEACCHの考え方を参考にしてみると、毎日の生活が少しスムーズになるかもしれません。

  • 福祉領域における血液検査結果の「WBC」と「CRP」の重要性とは?

    福祉の現場では、利用者さんの健康状態を日々観察することがとても大切です。その中でも、病院で行われる「血液検査」の結果を理解することは、体調変化にいち早く気づくための重要な手がかりになります。特に「WBC(白血球数)」と「CRP(C反応性タンパク)」は、感染症や炎症を把握するうえでよくチェックされる項目です。


    1. WBC(白血球数)とは?

    – 白血球は、体の中に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃する「免疫の主役」
    – 血液検査では WBC値(白血球の数)を測定します
    – 正常範囲より高ければ「感染や炎症の可能性」、低ければ「免疫力の低下」を示すことがあります

    例:
    ・風邪や肺炎などの感染症 → WBCが増加
    ・抗がん剤治療などで骨髄抑制がある場合 → WBCが減少


    2. CRP(C反応性タンパク)とは?

    – CRPは、体の中で炎症が起きたときに血液中に増える物質
    – 炎症の「程度」を数値で示すため、感染やケガの重症度を把握する指標になります

    例:
    ・風邪の初期 → CRPはあまり上がらない
    肺炎や尿路感染症など全身に影響する炎症 → CRPが大きく上昇


    3. 福祉現場での活かし方

    福祉職は医師や看護師ではありませんが、利用者の生活を支える立場として血液検査の意味を理解しておくことは役立ちます。

    – 発熱時にWBC・CRPの数値を把握することで「ただの風邪か」「重い感染か」を医療者と共有できる
    – 利用者さんやご家族に「数値が高いので注意が必要です」と説明する際の根拠になる
    感染症が広がるのを早期に察知し、他の利用者への感染予防につなげられる


    4. まとめ

    WBCとCRPは、どちらも「体の中で感染や炎症が起きていないか」を判断する大切な指標です。
    – WBC → 白血球の数(免疫の働き具合)
    – CRP → 炎症の強さ(どのくらい重いか)

    福祉現場において、これらの数値を理解し医療職と連携することは、利用者さんの健康を守るための大きな力になります。


    免疫についてをシリーズ化したこちらの記事をも一緒にお読み頂けるとさらに理解が深まります。免疫機能を高めるためにできる生活習慣