もくじ
自閉症とは?
自閉症という言葉を聞いたことありますでしょうか?
または自閉スペクトラム症、ASD、アスペルガー症候群などと言われます。
毎年4月2日が、世界自閉症啓発デー(World Autism Awareness Day)と定められています。自閉症への理解と支援を促進する国際的な記念日です。
先月、運転中に沖縄アリーナを通り過ぎた際、アリーナの電光掲示板にも自閉症啓発デーが載っていました。
世界自閉症啓発デーは、自閉症や発達障害への正しい理解を深め、誰もが幸せに暮らせる社会の実現を目指す日であり、日本でも4月8日までの期間を「発達障害啓発週間」として、シンボルカラーである青い光でランドマークを照らす(ブルーライトアップ)などの啓発活動が全国で行われます。
自閉症啓発デーから1か月遅れてしまいましたが、今回は自閉症についてのお話しをしたいと思います。
では、自閉症とはどのようなものなのでしょうか?
冒頭でもお伝えしましたが、自閉症は他にも、自閉スペクトラム症、ASD、アスペルガーなどと言われます。
自閉症とは、発達障害の特性のひとつであり、 人とのコミュニケーションや社会的な関わり方、行動や興味の偏りに特徴が見られます。そのこだわりや集中力ゆえに何か特定の分野で目覚ましい活躍をしているケースも多いです。
かつては「自閉症」「アスペルガー症候群」などと分けて呼ばれていましたが、現在では「自閉スペクトラム症」として幅広い特性を含む概念として理解が広まっています。略して、自閉症と呼ばれることが多いです。
関連:自閉症(ASD)とは?特性の理解と支援の考え方をやさしく解説
自閉症の語源
自閉スペクトラム症の語源について少しお話しをしたいと思います。
英語で書くと以下のようになります。
英語:Autism Spectrum Disorder(ASD)
自閉症がASDとも呼ばれるのはこの頭文字をとったものからきています。
さらに英語を細かく見ていきます。
Autism(オーティズム)→自閉症
Spectrum→連続性
Disorder→障害
自閉症を表す「Autism」の解説も少ししたいと思います。
Autism はautoとismを合わせた言葉で、auto(オート)は自己や自動を意味します。
ism(イズム)は特定の「主義」「思想」「特性」を意味します。
autoは古代ギリシャ語で自己を意味する「autos(オートス)」に由来しており、自分自身の世界に閉じこもっているように見える状態を指した言葉です。
しかし現在は「自閉スペクトラム症(ASD)」という名称が一般的であり、単に「自閉」という言葉だけでは、内向的で殻に閉じこもっているという誤ったイメージにつながるため、定義の見直しが進んでいます。
補足としてアスペルガーの語源についても触れたいと思います。
自閉スペクトラム症はかつてアスペルガー症候群と呼ばれていました。アスペルガーという名前は、1900年代中ごろにオーストリアで小児科医をしていたハンス・アスペルガー先生の名前から来ています。現代において自閉スペクトラム症と診断される特性を詳細に記録、報告したのがアスペルガー先生と言われています。一昔前はアスペルガーという言葉を使っていましたが、現在は自閉スペクトラム症としてまとめて表現されています。
公表している著名人
自閉スペクトラム症を公表したと言われている著名人には以下の方々がいます。
スーザン・ボイル
米津玄師
イーロン・マスク
ビルゲイツ(こちらはあくまで可能性)
高機能自閉症とは?
上に挙げたような方は高機能自閉症と呼ばれることがあります。芸術や技術、研究などで力を発揮し活躍しているケースもあります。
<文部科学省が出している定義>
高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。なお、「高機能」とは「知的発達の明らかな遅れがない」ということを意味しており、「平均より高い知的能力がある」という意味ではありません。高機能自閉症には、IQが70付近の数値から140付近と非常に高い数値まで、さまざまなケースが見られます。
知的発達の遅れがない分、本人も周りも障害があることに気づきにくく、診断を受けずにそのまま大人になるケースが多くあります。適切な支援を受けられないことで、高機能自閉症により起きる困りごとや生きづらさを感じ、二次障害(パニック障害、適応障害、不安障害、うつなど)が引き起こされることもあります。
芸術や技術、研究などで力を発揮し活躍しているケースもある一方で、コミュニケーションや対人関係の仕事、マニュアルがないような臨機応変な対応が求められる場面においては、頭が真っ白になったり、強くストレスを感じたり、異常に疲れたり、パニックになったりすることもあります。
関連:高機能自閉症とは?特徴・原因・接し方・大人の課題まで徹底解説
自閉症支援 TEACCHプログラムの構造化理論(ストラクチャー)
そのような自閉症ないし自閉的傾向の高い方への支援や配慮としてよく使われている支援にTEACCH(ティーチ)プログラムがあり、その中で扱われている構造化理論(ストラクチャー)についてお話ししたいと思います。
まず、構造化とはどのようなものかご存知でしょうか?
自閉症の方への構造化支援をお話しする前に、私たちの身近なところに構造化はたくさん取り入れられています。カレンダー、時計、地図、路線図などが広い意味での構造化を取り入れたものになります。
では、今度は自閉症の方に対して、具体的にどのような支援を行うと良いのかについて、イメージを持ちながらお伝えできればと思います。
まず、自閉的傾向が高い方が、どのような状況下で困りやすくなるかを皆さまにもイメージしてみて頂きたいので例を出したいと思います。
関連:TEACCH(ティーチ)プログラムとは?自閉症支援の基本をわかりやすく解説
構造化のイメージ
雑草が覆い茂って砂利や石ころが無雑作に転がっているような、まだ道とも言えないような場所があって、自身はその中にいるとします。さとうきび畑のように、身長の高さまで雑草が茂っているので、自分がどこにいるのかが分からない。そして、足元も石がたくさんあり不安定なので、歩こうとしても、足を滑らせたり、つまづいたりして、中々動き出せない、といった状況です。
今お話ししている内容はあくまでイメージですが、このような感覚になることで困りやすくなるのではないかと考えられます。そういう環境下なので、環境の整備、つまりは支援が必要です。
雑草を刈りとって見晴らしを良くし、道をセメントで舗装して、どこが歩道でどこが車道なのかが分かるようにする。車や歩行者用の信号もあるといいでしょう。
そして、その場にいるだけでは土地の全体像は分からないので、今度は地図を作って、自分がどこにいるのか、なぜここにいるのか、これからどこに向かえば良いのかなどを示し、状況をクリアにしていきます。
これが構造化と呼ばれるものです。
今挙げた道路整備の例は私なりに一般の方向けにお伝えしたものですが、実際の支援はこのようなイメージで当事者の困り事を分析(アセスメント)し、アプローチすると進めやすいのではないかと思います。
構造化を使った実際の支援
自閉症ないし自閉的傾向のある方がその場で動けなくなったりパニックになったり自傷や他害を起こしていたりする場合は、まさに目の前は雑草が茂って足元は石ころで不安定な場所なので、視界が悪く、自分がどこにいるのか、なぜここにいるのか、これから何をしたらいいのか、どう動いたらいいのかが分からないといった状況に置き換えられます。
そのため、雑草や石を可能な限り撤去する必要があります。これは手入れがなされていなかった地面を舗装し、道路を作っていくイメージです。
自閉傾向が高いと、聴覚などの感覚が人一倍敏感になると言われています。街中でイヤーマフ(ヘッドホンみたいなやつ)をつけている人を見たことはないでしょうか?これは聞こえ過ぎる聴覚情報を一部遮断することで心身の負荷を減らす目的があります。
つまりは本人にとって音や物などのノイズ(不要な情報)と考えられるものを目の前から取り除いていくことで、景色をクリアにシンプルにしていきます。
そのように道路を作った上で今度は、
・今は何をする時間なのか?
・具体的に何をどうしたらいいのか?
・なぜこれをするのか?
・どこまでやったら終わりなのか?
などの具体的な内容を示します。これはつまり、道の歩き方や目的地の場所、目的地までの移動手段、目的地まで行ったあとはどうするのか、を示すことに置き換えられます。ナビゲーション(案内)と言えます。
自閉傾向の高い方は抽象的なコミュニケーションが苦手とされているので、写真カードなどで手順を視覚化してお伝えするとより安心した行動に繋がると思います。
さらに、
自閉特性のある方は模倣が得意で繊細な部分まで表現できることがあります。そして、自身が体験したことに対しての記憶力が高いので、一度、二度、三度と繰り返して行っていくことでパターンが定着していきます。それを日常的かつ定期的に行うことが分かると安心感が生まれていきます。パターンが定着し、それを行うことが日課(ルーティン)になると、本人の中での役割意識が芽生えたり、支援を受けつつも社会的な自立に繋がったりしていきます。
以上が構造化と呼ばれるものです。
構造化支援で念頭に置いておくこと
自閉傾向の高い方にとって、道順(手順)は鎖のように繋がっており、突然手順が変わってしまうと困ってしまいます。
例えば、私たちが普段通っている道が事故などで急に閉鎖されてしまい、案内もなく、迂回路もないような場合も困ってしまいますよね?
実際の支援ではそのような状況をイメージして、本人に大きな負担がかからないように予測した対応を行います。本人が関わる範囲内で急な変更がある際は、事情を丁寧に説明し、代替え案を提案したり、もとに戻るまで待ったり、慎重にナビゲートすることが望ましいです。
おわりに

いかがだったでしょうか?
介護や福祉、支援の現場では思いやりが大切と言われていますが、専門的な支援技術を用いて解決に導くことや、支援を受けながらも本人らしく歩めるよう自立へと導くこともまた思いやりの形だと思います。
技術を活用して機械的に支援を行うのではなく、支援者も1人の人間として、達成感を一緒に味わったり賞賛したりと、お互いのやりがいに繋がるような働きかけが大切だと思います。
アプローチした結果、当事者をかえって混乱させてしまったとしても、当事者はそういった支援者の真剣な姿勢をしっかり見てくれていると思いますので、その過程を含めて信頼関係を育んでいくことにも繋がっていくと思います。服薬などの医療的な支援も合わせて取り組んでいくことが大事だと思います。
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