障害者福祉サービスとは? 種類・利用の流れ・選び方までを分かりやすく解説

はじめに

障害のある人が住み慣れた地域で「自分らしく、生きやすく」暮らすためには、日常生活を支える仕組みが必要です。その中心にあるのが 障害者福祉サービス です。

しかし実際には、

・種類が多くて違いが分かりにくい

・自分がどれに該当するのか判断しづらい

・申請までの流れが複雑に見える

など、利用を検討する人にとってハードルが高く見えがちです。

この記事では、障害者福祉サービスの全体像を 初めての人にもわかりやすく体系的にまとめました。制度の基本利用の流れサービスの種類の選び方まで、実際の相談支援の現場で使われる視点も交えて詳しく解説します。

障害者自立支援法障害者総合支援法について解説した記事も合わせて読むと理解が深まると思います。


障害者福祉サービスとは? 制度の目的と特徴

障害者福祉サービスとは、障害者総合支援法 に基づき、障害のある人が地域で安心して生活できるよう必要な支援を提供する仕組みです。

対象となる人

以下の障害や疾患を持つ人が利用できます。

知的障害

身体障害

精神障害

発達障害

難病等の対象疾病

その他、日常生活に著しい支障がある人

対象範囲は幅広く、「障害者手帳が必須」という誤解もありますが、実際には手帳がなくても利用できるケースがあります(難病など)。

制度の目的

1. 日常生活の安定や安心を確保

2. 就労や社会参加、自己実現を支援

3. 家族の介護負担を軽減(レスパイト)

「暮らしの質(QOL)」を高めるための社会的インフラといえるでしょう。


障害者福祉サービスの種類

サービスは大きく「自宅」「通所」「住まい」「就労」「家族支援」の5つの場面で分類できます。ここでは、代表的なサービスを例とともに紹介します。

(1)自宅で暮らしを支える

居宅介護

入浴・食事・排泄・掃除・買い物など、日常生活全般を支える基本サービス。

:

・一人暮らしで家事が難しい

・身体介護が必要だが家族が仕事で不在

・生活リズムを整えるために定期的に訪問してほしい

重度訪問介護

重度の肢体不自由や医療的ケアが必要な人に対し、長時間の見守りや介助をまとめて提供。

特徴:

24時間に近い利用が可能 外出支援も含む ALS等の難病の方の利用が多い

●同行援護(視覚障害)

外出時に必要な移動支援と情報提供(音声案内など)を行う専門サービス。

(2)通所して訓練や活動を行う

●自立訓練(生活訓練・機能訓練)

生活リズムづくり、社会生活に必要な力を身につけるための訓練。

:

・朝起きて通所する習慣をつけたい

・金銭管理や公共交通機関の利用を身につけたい

生活介護(重度障害)

通所して、創作活動・リハビリ・日中の見守り等の支援を受けるサービス。

特徴:

医療的ケアを含むこともある 余暇活動・社会参加の機会が広がる

就労移行支援

一般企業への就職を目指す人のための訓練・面接練習・就職活動サポート。

利用期間:2年間

企業への定着支援もあり、就職後のフォローも手厚いのが特徴です。

就労継続支援A型・B型

A型:雇用契約あり・最低賃金以上の給与

B型:体調やペースに合わせて働ける柔軟な働き方

:作業内容

・軽作業

・清掃

・パン屋、カフェ

・PC作業 など

(3)住まいの場を支える

グループホーム(共同生活援助)

少人数の住まいで、見守りや生活支援を受けながら暮らす仕組み。

メリット:

・一人暮らしに近いが支援が得られる

・家事や健康管理をサポート

・仲間と生活する安心感

施設入所支援

夜間や休日に施設に入所して生活を支え、日中は通所サービスと組み合わせる形が一般的。

(4)家族の負担軽減(レスパイト)

短期入所(ショートステイ)

数日〜1週間程度、施設での生活支援を受けるサービス。

利用ケース:

・家族が冠婚葬祭で不在

・介護疲れの休息

・いざという時の緊急避難先

(5)地域とのつながりを広げる

地域生活支援事業(自治体独自)

・移動支援

・地域活動支援センター

・余暇活動のサポート

・相談支援

など、地域によって内容が異なります。


障害者福祉サービスを利用する流れ

初めて利用する人でも迷わないように、実際の手続き順序を詳しく説明します。

STEP1:相談支援専門員に相談

まずは、相談支援事業所へ連絡します。相談員は、生活状況や困っていることを丁寧にヒアリングし、必要なサービスを一緒に整理します。相談員は計画相談員と呼ばれることもあります。

相談は無料です。

STEP2:サービス等利用計画の作成

計画相談支援として、相談員が「サービス等利用計画」を作成します。

この計画は、

・本人の希望

・現在の生活課題

・必要な支援内容

・目標

を明確にするための重要な書類です。

STEP3:市区町村へ申請 → 支給決定(受給者証の発行)

申請後、市区町村が「支援区分認定調査」を行い、必要な支援量を判定します。

支援区分は0〜6までで、数字が高いほど多くの支援が認められます。

その後、利用できるサービスの内容が記載された受給者証が発行されます。

STEP4:サービス事業所と契約

受給者証をもとに、利用したい事業所と契約し、サービスが開始されます。

事業所の雰囲気や方針は様々なので、見学を複数回行うことが推奨されます。


サービス選びのポイント

多くの選択肢があるため、「自分に合うサービスは何か?」と迷う人は多くいます。

ここでは現場経験から、選ぶ際の重要ポイントをまとめます。

本人の「生活目標」が軸になっているか

・働きたいのか

・社会参加したいのか

・健康的な生活リズムを作りたいのか

・家族の負担を軽くしたいのか

これらを明確にし、方向性が決まると、必要なサービスも明確になります。

スタッフとの相性・支援の質

事業所ごとに雰囲気は大きく違います。

「安心して相談できるか」「説明が丁寧か」なども重要な判断材料です。

通いやすさ・生活リズムとの相性

送迎の有無、利用時間、家からの距離など、生活に無理がないか確認しましょう。

家族の負担軽減に繋がるか

短期入所(ショートステイ)居宅介護を活用することで、家族のケア負担が大きく変わる場合があります。


利用料金

障害者福祉サービスの多くは原則1割負担です。

さらに、所得に応じて「月額上限額」が決まっているため、負担が大きくなりすぎないよう配慮された制度になっています。

低所得世帯→上限0~4,600円

一般所得世帯→上限37,200円

グループホームの食費・家賃などは別途必要。


困ったときの相談先一覧

・相談支援事業所(計画相談)

・市区町村の障害福祉課

・地域生活支援センター

発達障害者支援センター

・精神保健福祉センター

・医療機関のソーシャルワーカー

複雑に見える制度も、相談先を知っておくと一気にハードルが下がります


おわりに

いかがだったでしょうか?

障害者福祉サービスは、ただの「支援のメニュー」ではなく、その人の人生を支え、より豊かな生活を実現するための仕組み です。

サービスは組み合わせながら柔軟に利用でき、生活状況の変化に合わせて見直すこともできます。

制度を正しく知ることで、

「できること」が広がり、

「生きやすさ」が具体的に形になっていきます。

この記事が、必要な支援につながるきっかけになれば幸いです。