もくじ
はじめに
福祉や医療の現場では「PT・OT・ST」という言葉を耳にすることがあります。これらは専門職の略称であり、リハビリテーションや生活支援には欠かせない存在で、ともに国家資格を持つ専門職が担っています。
今回の記事は、
・それぞれの意味と役割
・目的は治すことだけではなく持っている力を活かすことにもあるという考え方
・福祉現場との連携例
・利用した後からが大切であること
についてお話しさせて頂きたいと思います。
PT・OT・STとは？
まず、PT・OT・STを利用する前に、利用する対象にある方の生育歴や心身の状態、利用したい背景などの聞き取り（問診）が行われます。適切にサービスを利用していけるようにそれらの情報が根拠となっていきます。
PT（理学療法士）とは
PT（Physical Therapist：理学療法士）とは 、主に「身体の機能回復」を専門とするリハビリ職です。病気や障害、高齢による身体機能の低下に対して、運動や物理的な手段（電気・温熱・水治療など）を用いて支援します。
具体的な役割
• 歩行訓練や立ち上がり動作の練習
• 関節の可動域や筋力の維持・改善
• 車椅子や杖、補装具など福祉用具の選定と指導
• 痛みやしびれの軽減
OT（作業療法士）とは
OT（Occupational Therapist：作業療法士） とは、心身の機能を「生活動作」に結びつけるリハビリ職です。日常生活で必要な「できること」を増やし、生活の質（QOL）を高める支援をします。
具体的な役割
• 食事・着替え・入浴など日常動作の訓練
• 認知症の方への認知機能リハビリ
• 手工芸や調理など作業活動を通した心身の活性化
• 自助具（スプーンや食器など）の選定や使い方の工夫
ST（言語聴覚士）とは
ST（Speech-Language-Hearing Therapist：言語聴覚士）とは、「ことば」「聞こえ」「食べる機能」を支援する専門職です。失語症や発音の問題、摂食・嚥下障害などにアプローチします。
具体的な役割
• 発語・発音訓練（失語症や構音障害の改善）
• 聴覚障害に伴うコミュニケーション支援
• 嚥下（飲み込み）訓練や食事形態の工夫
• 言語発達の支援（子どものことばの遅れ）
目的は治すことだけではなく持っている力を活かすことにもある
前の章で、PT、OT、STそれぞれの用語説明で、リハビリの意味合いがあるとお話ししました。
ですが、生まれた時から障害を持っていることや、その他の様々な状況によって、そもそも治すことを前提（目的）としていない場合もあります。
このように、治すことを目的としない考え方は社会モデルと呼ばれています。
社会モデルは「問題の原因は社会の障壁にある」と考えます。そのため、本人が元々持っている強みを見極め、それを前提に社会生活を送れるように支援していきます。
一方で、治すことを目的とする考え方は医療モデルと呼ばれています。
医療モデルは「問題の原因は個人の障害や病気にある」と考えます。医療モデルでは、本人の今の状態は改善すべきものであると考えるため治療の対象となります。こちらは優生思想の観点を強く含んでいます。
従来は、医療モデルが主に台頭していましたが、福祉の考え方が広まるにつれて社会モデルも強く謳われるようになってきました。
そのため、利用者さんが持っている力を最大限活かしたり、身体機能が落ちていかないよう維持もしくは向上を目的に行われたりするケースにおいても利用されています。
つまりは「目的をどこに置くか」が大切です。
福祉現場との連携例
PT・OT・ST は、医療機関だけでなく、福祉施設や在宅支援の場でも活躍しています。
• デイサービス・デイケア
利用者が自宅で暮らし続けられるよう、体力や生活動作を維持するためのリハビリを提供。
• 特別養護老人ホーム・グループホーム
介護職員と連携し、生活動作の自立支援や認知症予防に関わる。
• 訪問リハビリ
在宅生活を送る方の家に出向き、住環境に合わせた動作や訓練を実施。
• 障害福祉サービス
発達障害児へのことばの訓練や、身体障害者への就労支援など、多様な場面でサポート。
利用した後からが大切
PT・OT・STを利用したことで、専門的な見解を聞くことができたり、適切な介助のやり方が見つけられたり、といったように様々な恩恵を受けることができます。
しかし、利用して終わりではなく、また定期的な利用ですぐに改善できるというものでもなく、今度はそれらを日常の中に落とし込んでいくことが大切です。
そのためには、家族や福祉施設の支援員など、本人の生活を支えている方達の協力が必要です。ですので、利用者さんの支援はそのような方々の協力のもとではじめて成り立っているということを認識して、足並みを揃えて取り組んでいくことが大切です。
PT・OT・STを利用するのは基本的に本人ですが、必要があればその家族や支援員などが同行するケースも多いです。
専門職からの見解を日常の中に落とし込んでいくために、デイサービスや生活介護事業所、グループホーム、入所施設の支援員であれば、同行していた家族から利用時の内容や所感などを伺い、施設内でも活かしてみると良いです。また、施設の支援員も実際にPT・OT・STに同行してみて、現場で行われていることを体感したり、支援員として日々の様子を伝えたりすると、より良い支援に繋がっていくかと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか？
PT・OT・STは、身体や生活の機能を支えるだけでなく、その人が「その人らしく」暮らしていけるように寄り添う存在です。できないことを補うだけでなく、「まだできること」「これから伸ばせること」に光を当てて、一緒に歩んでいく支援でもあります。
そして、その支援は専門職だけで完結するものではありません。ご本人を中心に、ご家族や支援員、地域の仲間たちと協力し合うことで、日常生活の中に少しずつ根づいていきます。
PT・OT・STを通じて広がるのは、リハビリという言葉にとどまらず、「その人らしい生活を応援するための関わり」なのだと思います。
