ノンバーバルコミュニケーション 〜言葉を超えた伝え方〜

はじめに

今回は「ノンバーバルコミュニケーション」についてご紹介します。

人は言葉だけでなく、身振りや表情などさまざまな方法で気持ちを伝えています。ノンバーバルコミュニケーションについて理解しておくと、福祉だけではなく、普段の生活や仕事、子育て、教育などの場面で対人関係がスムーズに、そして良好になっていきます。

また、特に介護・福祉の現場のように言語でのコミュニケーションが困難な方々と関わる上で、ノンバーバルコミュニケーションは大きな役割を担います。

まずは、ノンバーバルコミュニケーションの用語の説明をし、次に私の体験から感じた態度や姿勢の大切さについてお話ししていきたいと思います。

※今回の記事とは別で、以前『音楽を哲学する 〜自己表現としての音楽〜』という長編の記事(論文)を書いたことがあります。3万字を超えるものなので他の記事と比べてかなりボリューミーで内容も難しいかもしれませんが、福祉や音楽、哲学、人との向き合い方など参考になるかもと思いましたので合わせてご紹介させて頂きます。


ノンバーバルコミュニケーションとは?

ノンバーバルコミュニケーション

では、そもそもノンバーバルコミュニケーションとはどのようなものなのでしょうか?

ノンバーバル(Non-verbal)とは「非言語」という意味です。つまり、言葉を使わずに相手に気持ちや意図を伝える方法を指します。具体的には、表情、視線、姿勢、声のトーン、身振り手振り、さらには服装や距離感なども含まれます。


バーバルコミュニケーションとの違い

一方で、言葉を使ったやりとりは「バーバル(Verbal)コミュニケーション」と呼ばれます。バーバルは会話や文章のように、言葉を通じて明確に伝える手段です。これに対してノンバーバルは、直接的に言葉を交わさなくても、雰囲気や感情を伝える力を持っています。


視覚情報は全体の83%も占める

五感による知覚の割合

人間の五感による知覚情報の割合は視覚情報は83%、聴覚は11%、嗅覚は3.5%、触覚は1.5%、味覚は1%と言われています。

このグラフと値からも、視覚情報がどれだけ大きな割合を占めているかが分かります。


姿勢や態度の積み重ねで信頼関係を作っていく

視覚情報などを通じて、利用者さんは介助者の姿勢態度を本当によく見ています。言葉でのコミュニケーションが難しい状況があるからこそ、言葉以外での情報から相手を見極めているのです。

ですので、たとえ介助者が身振り手振りや声かけを大胆にしたキャッチーな表現をしなかったとしても、そういった介助者の誠意は利用者さんにしっかり伝わることもあります。

利用者さんは、「この人は本当に私のことを大切に思ってくれているのだろうか?」といった心持ちで常に周りを観察しています。

以下では、基本的なことではありますが、私の体験をもとに改めて大切だと感じたことについてお話ししていきたいと思います。


・挨拶をしっかりする

毎日会っている人ほど日常の挨拶が疎かになってしまうことがあるかもしれません。ですが、会った時と別れる時に相手の方にしっかり意識を向けて挨拶をするというのは、その時の関係値を表したり、積み重ねによりその後の関係値に影響を与えたりといったように、些細なことに見えても大きな意味を持ちます。「親しき仲にも礼儀あり」と言われるように、よく会っているからこそ挨拶が大切であり、日常の姿勢や態度が積み重ねとして後に現れていきます。

・相手の目を見て話す

人によっては、目を見ない方が安心したり伝えやすかったりするかもしれませんが、形として、態度として、相手に向き合う心を表明することは大切です。しかし、目を合わせることが苦手な方もいらっしゃるので、ここは状況に応じて取り組むのが良いと思います。

・穏やかな表情や声色を意識する

話している際の身振り手振り、そして声かけ一つの工夫から相手に安心感を与えることが出来ます。

前の章でもご紹介した人間の五感による知覚情報の割合は、視覚情報が83%、聴覚が11%と上位を占めています。

表情や声色のどれもが視覚や聴覚情報を多く含んでいる行為ですので、表情は前節でお話ししたように目を見て話し、目や口、頬は話の内容に応じて豊かに動かすようにし、身振り手振りはゆっくりと広く使い、声かけはゆっくりとトーンを落とし、相手が聞き取りやすい発音で話すと、相手に納得感説得力安心感などを感じさせることができます。

・日常会話を心がける

利用者さんに対して関わりを持つ際、業務や日常動作のお話しだけではなく、業務に支障のない範囲で日常会話をすることは大切です。たとえ、言葉での会話だったとしても、身振り手振り、そして口調などといったものからその人の人柄が滲み出ていきます。実はこういった他愛もない会話を出来るかどうかは信頼関係の基礎になります。

また、自分の考えていることや悩み、想いをいち信頼できるパートナーとして利用者さんに話してみることもありだと私は考えています(賛否両論あるかもしれませんが)。たとえ、利用者さんからは言葉でのリアクションがなかったとしても、介助者が思い悩んでいる姿誠意真剣さはしっかり伝わっています。


おわりに

いかがだったでしょうか?

ノンバーバルコミュニケーションは、私たちが日々の関わりの中で自然に使っている大切な表現方法です。表情や声色、姿勢や挨拶といった一見小さな行動が、相手に安心感信頼感を届ける大きな力になります。特に福祉や介護の現場では、言葉だけに頼れない場面が多くあるからこそ、こうした非言語的な関わりが支援の質を左右します。

また、これは福祉の現場に限らず、家庭や学校、職場などあらゆる場面で活かせる力です。私たちの態度や姿勢の積み重ねが、相手に大切にされていると感じてもらえるきっかけとなり、良好な関係づくりにつながっていきます。

日常の中で当たり前に行っている小さな動作や態度を、改めて意識すること。それが、言葉以上に強いメッセージとなって相手に伝わっていくのだと思います!