現場で役立つ知識 細菌感染とウイルス感染の違いとは? 血液検査から読み取る判断のポイント

はじめに

発熱や咳、喉の痛み、全身のだるさなど、私たちが日常で経験する感染症の多くは、「細菌感染」か「ウイルス感染」によるものです。

しかし、この2つは原因も治療法も大きく異なるため、正しく見分けることがとても重要です。

また、医療の領域においては、症状だけでなく血液検査の数値、特に

CRP(炎症反応)

WBC(白血球数)

といった指標をもとに、感染の性質を判断する材料にしています。

今回の記事は、私が重い障害のある方や自分自身で不調を主張することが難しい方と接してきた中で大切だなと感じた部分、特に細菌感染とウイルス感染の違い、そして、それらを判断する根拠でもある血液検査のCRP(炎症反応)とWBC(白血球数)の関係についての知識をお届けしたいと思います。

※原則、感染症を判断するのは免許のある医師であり、それ以外の立場の人は症状を断定することはできませんが、これらの知識を持っておくときっと何かの役に立つと思ったので記事にしました。支援者や親御さんは、決して病気を断定せず、あくまで可能性として考える道しるべにして頂けたらと思います。

※CRPとWBCについて詳しく解説したこちらの記事も参考までに読んで頂けると、より理解が深まると思います。


細菌感染とウイルス感染

細菌感染とは?

特徴と代表的な病気

細菌感染は、体内に侵入した細菌が増殖し、炎症を引き起こすことで起こります。

代表例

・肺炎(細菌性肺炎)

・尿路感染症

・扁桃炎(細菌性)

・蜂窩織炎(皮膚感染)

主な特徴

・急激に症状が悪化しやすい

・高熱が出やすい

・局所の痛み、腫れ、膿がみられることがある

抗菌薬(抗生物質)が有効


ウイルス感染とは?

特徴と代表的な病気

ウイルス感染は、ウイルスが細胞に入り込み増殖することで起こります。

代表例

・風邪症候群

・インフルエンザ

・新型コロナウイルス感染症

・ノロウイルス感染症

主な特徴

・発熱、倦怠感、筋肉痛など全身症状が目立つ 症状は数日〜1週間程度で自然軽快することも多い

抗菌薬は基本的に効果が薄い


細菌感染とウイルス感染の違い(比較一覧表)


血液検査で見る判断材料

CRP(C反応性蛋白)とは?

CRPは、体内で炎症が起きたときに上昇する物質です。

・正常値:おおよそ 0.3mg/dL以下

・炎症が強いほど高値になる

CRPの読み取りポイント

・細菌感染:CRPが高く上昇しやすい

・ウイルス感染:CRPは軽度上昇〜正常範囲のことが多い

※ただし、初期の細菌感染や重症ウイルス感染では例外もあります。


WBC(白血球数)とは?

白血球は、体を守る免疫細胞です。

正常値:おおよそ 3,000〜9,000/μL

WBCの読み取りポイント

細菌感染:白血球数が増加しやすい(特に好中球)

ウイルス感染:白血球数は正常〜やや低下、リンパ球が増えることも


CRPとWBCから見る感染症の判断ポイント

ここが非常に重要なポイントです。

CRPが高く、WBCも高い

→ 細菌感染を疑う

・抗菌薬治療が検討されることが多い

・重症化リスクの評価が必要

CRPが低〜軽度上昇、WBCが正常

→ ウイルス感染の可能性が高い。

・抗菌薬は基本的に不要

・経過観察と対症療法が中心

数値が中間・はっきりしない場合

→ 症状の経過・画像検査・再検査が重要

・発症からの時間

・発熱の推移

・呼吸状態や全身状態

CRPが正常、WBCが上昇

→ 白血球がウイルスや細菌と戦うために準備を始めている段階で、これから炎症や症状が大きくなってくる可能性あり。

・経過をしっかり観察

以上が判断のポイントです。ですが、数値はあくまで「判断材料の一つ」であり、単独で決めつけないことが大切です。


福祉・介護の現場で意識したい視点

高齢者や障害のある方では、

・典型的な症状が出にくい

・発熱が目立たない

・CRPやWBCの上昇が遅れる

といったケースも少なくありません。

そのため、

・いつもと違う様子

・食欲低下

・意識レベルの変化

・呼吸数の増加

といった生活面の変化を見極めて、早期に医療につなぐことが重症化予防につながります


おわりに

いかがだったでしょうか?

細菌感染とウイルス感染は、ひとえに「感染」といっても、症状やその中身、そして、治療方針が大きく異なります。

そのため、医療機関と連携し、血液検査などを通じて、専門的かつ客観的な判断を仰ぐ必要があります。

重い障害のある方や自分自身で不調を主張することが難しい方にとっては、それらの情報が彼らにとっての「言語」や「表現」の役割を担っています。

CRPやWBCといった血液検査は、感染の性質を見極めるための重要なヒントですが、数値だけで判断せず、症状や経過とあわせて考えることが何より大切です。

医師や看護師などの医療機関に携わっている人は、専門的で客観的な判断を行うことができても、患者さんの日々の様子を見ているわけではありません。

そのため、日々の様子を見ている支援者や親御さんからの「いつもと何がどう違うのか」といった情報がとても大切なものになってきます。

今回は、聞き慣れない専門用語もあり、少し難しい話だったかもしれませんが、

細菌感染

ウイルス感染

CRP(炎症反応)

WBC(白血球数)

この4つの意味と関係を覚えて頂けたら、きっと本人により添った、より良い支援に繋がっていくのではないかと考えます。