もくじ
はじめに

重度訪問介護は、重い障害のある人が「自分らしく生きる場所」として地域社会を選べるように支える、非常に重要な障害福祉サービスです。
特徴は、身体介護・家事援助・見守り・外出支援を長時間にわたりトータル的に提供する点です。
生活を丸ごと支えるサービスであり、「地域で暮らしたい」という願いを現実のものにする制度と言えます。
ここでは、制度の目的、対象者、支援内容、利用の流れ、居宅介護との違いなどを詳しく解説します。
重度訪問介護とは?
長時間・包括的な生活支援を可能にする制度

重度訪問介護は、以下の支援をまとめて・継続的に・利用者の生活リズムに合わせて提供できます。
・身体介護(食事・排泄・入浴・体位交換など)
・家事援助(料理、掃除、洗濯、買い物など)
・生活全般の見守り
・外出時の同行支援
特に大きいのは、「見守り」が正式にサービスとして認められている点です。
この「見守り」は、命や安全に直結する場面が多く、重度障害のある人にとって欠かせない支援です。
長時間の支援が可能
多くの場合、
・早朝から深夜まで
・夜間の体位交換
・24時間に近い連続支援
といった柔軟な利用ができます。
「居宅介護では支えきれない生活全体」を支えることができるのが、重度訪問介護の大きな役割です。
対象となる人

重度の障害により、日常生活のほぼすべてに支援が必要な人が対象です。
① 重度の肢体不自由がある人
例:
・ALS(筋萎縮性側索硬化症)
・脊髄損傷
・筋ジストロフィー
・脳性麻痺で四肢に強い麻痺がある人
呼吸器を使用している場合や、寝たきりに近い状態でも利用できます。
② 重度の知的障害・精神障害があり、常時見守りが必要な人
例:
・自閉症など強度行動障害があり、安全確保が難しい場合
・自己刺激行動や興奮などで目が離せない場合
・危険認知が困難で、外部の刺激に敏感なケース
こうした方は身体介護だけではなく、「そばにいてくれる存在」そのものが生活を安定させる鍵になります。
③ 障害支援区分4以上(行動障害がある場合は区分3以上)
自治体によっては生活状況を詳細に確認しながら、必要性を判断します。
④ 家族だけでは支えきれない生活環境の人
介護離職や家族の健康問題を防ぐためにも、重度訪問介護の利用は重要な選択肢です。
支援内容

支援内容が幅広く、生活のあらゆる場面に関わるのが重度訪問介護の特徴です。
① 身体介護(生活の根幹を支える)
身体介護には以下が含まれます。
・食事介助(嚥下を確認しながら安全に提供)
・排泄介助(オムツ交換、トイレ介助)
・入浴、清拭
・体位交換、褥瘡予防
・移乗、移動の介助
・呼吸器管理の補助(医療行為は不可だが観察は可)
重度の障害がある人にとって、一つ一つの介助が命に直結する場面も多いため、きめ細かい支援が求められます。
② 家事援助(生活環境づくり)
・調理
・洗濯
・掃除
・買い物
・ゴミ出し
・衣類の整理
・生活空間の衛生管理
ただし、家族のためだけの家事や、サービス提供範囲を超える活動は対象外です。
③ 見守り(最も重要な支援)
重度訪問介護の核となるのが見守りです。
利用者が安全に過ごせるよう、
・体調急変の早期発見
・危険行動の予防
・不安の軽減
・コミュニケーション支援
を行います。
見守りは「ただそばにいる」だけに見えますが、実際は高度な観察力と専門的な判断が必要です。居宅介護では見守りだけの支援は認められないため、ここが大きな違いになります。
④ 外出支援(地域生活のサポート)
・通院
・買い物
・手続きのための役所訪問
・散歩
・社会参加(趣味・地域活動)
重度の障害がある人にとって外出は大きなエネルギーが必要ですが、定着すると生活の幅が一気に広がります。
居宅介護(ホームヘルプ)との違い

重度訪問介護は居宅介護と一見似ているようで、制度の目的がまったく異なります。

つまり重度訪問介護は、
“生活のすべてを支える在宅ケアの基盤”
という位置づけになります。
利用の流れ

① 申請(市区町村)
受給者証の新規・更新の際に申請を行う。
② 調査と障害支援区分の認定
・訪問調査
・主治医意見書
これらをもとに、どれほど日常生活に支援が必要かを評価します。
③ サービス等利用計画の作成(相談支援専門員)
生活課題を整理し、支援時間や必要なサービス量を提案。
④ 支給決定と支給量の設定
市区町村が「どれくらい必要か」を判断して決定。
⑤ サービス事業所と契約
契約は非常に重要で、
・支援内容
・対応できる時間帯
・緊急時の連携
などを明確にしていきます。
重度訪問介護が社会的に求められる理由

① 地域で暮らす権利を守る
障害の重さによって“生活の場所が制限されるべきではない”という社会モデルの考え方が背景にあります。
② 家族介護の限界を補う
介護離職や家族の健康悪化を防ぎ、「家庭も本人も続けられる生活」を実現。
③ 本人の意思を尊重する暮らしができる
どこで暮らすか、誰と過ごすか、どんな1日を送りたいか。重度訪問介護は、その自由を守る制度です。
④ 社会参加をあきらめなくて済む
重度の障害があっても、
・地域活動
・学習
・仕事
・友人との交流
を続けられる可能性が広がります。
おわりに

重度訪問介護は、その人の人生そのものを支える障害者福祉サービスです。
そして、単なる介助の積み重ねではなく、地域で生きることを可能にする総合的なケアです。
・安心して暮らせる
・家族も無理なく支えられる
・自分の望む生活を選べる
・社会とのつながりを持てる
それらを実現するための、非常に重要な支援の仕組みです。
制度を正しく知ることで、本人・家族・支援者それぞれの選択肢が広がり、より良い生活につながっていきます。

