はじめに

障害者福祉サービスの中でも、暮らしの場そのものを提供し、24時間体制で生活全般を支えるサービスが「施設入所支援」です。
障害のある子供を持つ家族の高齢化や在宅生活の難しさなどから需要が高まっており、地域福祉の中でも重要な役割を担っています。
この記事では、施設入所支援の目的・対象者・支援内容・利用までの流れを、初めての方にもわかりやすく整理して解説します。
施設入所支援とは?

施設入所支援とは、障害者支援施設に入所している方を対象に、夜間や休日を中心とした生活全般の支援を提供するサービスです。
日中は、同じ施設内で提供される「生活介護」などのサービスを利用し、夜間・休日は施設入所支援が生活を支えるという仕組みになっています。
提供される主な支援
・食事、排せつ、入浴などの介護支援
・服薬管理、健康管理のサポート
・夜間の見守り、緊急時対応
・生活リズムづくりや環境調整
・余暇活動、外出支援 など
入所中の利用者が安全かつ安心して暮らせるよう、24時間体制で継続的に日常生活を支えることが大きな特徴です。
対象者

施設入所支援を利用できるのは、以下のいずれかに該当する人です。
・障害支援区分4以上が基本(※区分3でも一定の要件で利用可)
・在宅生活が難しく、継続的な支援が必要と判断された人
・医療的ケアや行動障害など、家庭だけでは十分な支援が難しい場合
・家族が高齢や病気などで介護が困難になった場合
入所支援は“最後の砦”のように誤解されがちですが、実際には、生活の安定・健康維持・自立への支援を目的とした「生活の場」として活用されます。
支援の特徴

施設入所支援では、単なる「介護」ではなく、以下のような支援観が重視されます。
① 個別支援
利用者一人ひとりの生活歴、健康状態、得意・不得意、生活リズムに合わせて支援を組み立てます。
入所していても、本人の意思を尊重した暮らしを行えるように、選択肢の提示や意思のくみ取りが大切です。
③ 安全と安心の確保
特に夜間はリスクが高くなるため、見守り体制や緊急時対応が重視されます。
④ 地域生活移行への支援
可能な範囲で、将来的にグループホームや自宅生活を希望する方への移行支援も行います。
入所中の1日の流れ

施設により内容は異なりますが、一般的な1日のイメージは以下の通りです。
6:00〜 起床・身支度・健康チェック
8:00〜 朝食
10:00〜16:00生活介護等の昼間サービスへ参加
17:00〜 入浴・余暇
18:00〜 夕食
21:00〜 就寝・夜間見守り
※夜間帯は職員が巡回し、安全確保を行います。
このように、日中・夜間の支援が切れ目なく提供されることが、入所支援の大きな安心材料となります。
利用の流れ

施設入所支援を利用するには、以下の手順が必要です。
① 市区町村へ申請(障害福祉サービスの利用申請)
支援区分認定が行われ、必要性が判断されます。
② 計画相談支援事業所と相談(サービス等利用計画の作成)
相談支援専門員が生活状況を聞き取り、計画を作成します。
③ 施設の見学・面談
本人の希望や生活リズム、医療的ケアの必要性などを確認します。
④ 受給者証の発行
サービス内容が決まり、受給者証が発行されます。
⑤ 契約・入所
利用契約を結び、生活がスタートします。
費用

費用は、基本的に以下の3つで構成されます。
・サービス利用料(原則1割負担)
・食費、光熱水費、日用品費などの実費
・所得に応じた「負担上限月額」による調整
多くの家庭では、負担上限月額により過度に高額になることはありません。
施設入所支援とグループホームとの違い

医療的ケアや重度の支援が必要な人は施設入所支援、地域生活を希望する人はグループホームといった使い分けが一般的です。
家族や本人が抱えやすい不安とその解決策

① 家族の罪悪感
「家で見られない自分が悪い」と悩む家族は少なくありません。
しかし入所支援は、家族を“介護から切り離す”ためではなく、本人の安心・安全を守るための選択肢です。
② 本人の生活リズムへの不安
環境の変化はストレスになることがあります。
個別支援計画によって、得意な活動・好きな時間帯に合わせた調整が可能です。
③ 将来の生活イメージが持てない
施設生活は「閉じた世界」と言い切れるものではなく、地域のイベント参加や外出支援など、社会との関係性を保つ様々な支援が行われます。
おわりに

施設入所支援は、重度の障害がある人が、安心・安全で、その人らしい生活を送るための重要な障害者福祉サービスです。
・24時間の生活支援
・個別性を尊重した支援
・医療的ケアへの対応
・家族の介護負担の軽減
など、多くのメリットがあります。
「入所=終わり」ではなく、
安定した生活の中で、本人の成長や希望を支えていく場であることが、現代の入所支援の大きな特徴です。

