障害者総合支援法とは?〜利用者・家族が知っておきたい制度の仕組み・目的・サービス内容の基礎知識を解説〜

はじめに

障害のある人が地域でその人らしく生活していくためには、日常生活の支援だけでなく、就労、社会参加、住まい、医療との連携など、多方面のサポートが必要です。

これらの支援を体系的に整え、「必要な人に必要な支援が届く仕組み」をつくっているのが障害者総合支援法 です。

2013年に施行されて以降、この法律は障害福祉サービスのベースとなり、

・どんな支援が受けられるか

・どうやってサービスを利用するのか

・地域社会がどのようにして障害のある人を支えるのか

といった考え方の中心に位置しています。

この記事では、初めて制度を知る方でも理解しやすいよう、制度の目的利用できるサービス利用手続き課題今後の方向性を網羅的に解説します。

※障害者総合支援法の土台にもなっている障害者自立支援法について解説したこちらの記事も合わせて読むと理解が深まると思います。


障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、障害のある人が地域で自立した生活を送るために、国・自治体が必要な支援を提供できるよう定めた法律です。

対象は次の人たちです:

身体障害

知的障害

精神障害(発達障害を含む)

難病など長期にわたり支援が必要な人

従来は障害種別ごとに別々の法律でしたが、多様なニーズに対応するため、

障害名ではなく、どれだけの支援を必要とするか

を基準に支援を決める仕組みに変更されました。

この考え方は、障害に対する社会の理解を深め、これまでよりも、本人の暮らしに合わせた柔軟な支援を可能にしています。


法律の目的 本人主体の生活と地域共生社会の実現へ

障害者総合支援法は、単にサービスを提供するための法律ではありません。

その背景には、社会としてめざすべき明確な方向性があります。

自分らしい生活(自立支援)の実現

日常生活の介助だけでなく、社会参加や就労支援(就労継続支援A型とB型就労移行支援)まで、多角的にサポートし「その人らしい生活」を支えます。

共生社会の実現

障害の有無を問わず、お互いに支え合って暮らす社会をつくることを目指します。

本人の意思決定を尊重する支援

支援の中心は本人です、サービス内容は「何を望むのか」「どんな暮らしをしたいのか」を軸に決めていきます。

家族の負担軽減

長期的な介護を続ける家族の疲れを防ぐための短期入所(ショートステイ)重度訪問介護など、ケアラー支援の視点も重視されています。


どんなサービスが利用できる?

障害者総合支援法のサービスは大きく3分類です。

① 介護給付(生活を直接支える支援)

日常生活の介助が必要な人に提供される基本的なサービス群です。

居宅介護

・入浴、排泄、食事など生活全般の介助

・調理、洗濯、掃除などの家事援助も含む

重度訪問介護

・重度の肢体不自由や重度知的、精神障害のある人を対象

・長時間にわたる見守り、外出支援を一体的に提供

・一人暮らしを可能にする重要なサービス

●行動援護

行動障害の強い人への生活支援と外出時の安全確保

●同行援護(視覚障害者)

視覚障害のある人が安全に外出するための支援 誘導、情報提供、移動介助など

短期入所(ショートステイ)

・介護者が病気、休息(レスパイト)、冠婚葬祭で支援できない時の宿泊支援。本人の生活リズムを整える役割もある

施設入所支援

夜間・休日を中心に施設で生活支援を行うサービス

② 訓練等給付(社会参加や働く力を育てる支援)

生活能力・就労能力・社会参加力を高めるための支援が含まれます。

生活介護

・日中活動の場

・食事、排泄などの介護

・創作活動、軽作業、リハビリなど

●自立訓練(機能訓練・生活訓練)

・身体機能回復

・日常生活、社会生活スキルの向上

就労移行支援

・一般企業を目指す人の職業訓練

・ビジネスマナー、職場体験、面接練習など

就労継続支援A型・B型

A型:雇用契約を結んで働く(最低賃金保障) B型:体調や特性に合わせて柔軟に働ける作業

共同生活援助(グループホーム)

・地域での共同生活を支援する暮らしの場

・夜間支援、生活相談、日常の見守りなど

地域生活支援事業(自治体が独自に行う支援)

自治体ごとに内容は異なりますが、地域で生活するうえで重要なサポートです。

・移動支援(外出サポート)

・手話通訳、要約筆記などのコミュニケーション支援

・日常生活用具の給付(特殊マット、コミュニケーション機器など)

・地域活動支援センターによる相談、居場所づくり

※障害者福祉サービスを解説したこちらの記事も合わせて読むと理解が深まると思います。


サービス利用の流れ

「どうやって利用すればいいの?」という疑問を持つ人のために、手順をわかりやすく整理します。

相談窓口へ(市区町村)

まず役所へ相談し、困りごと・希望する生活を共有します。

支援区分の認定(1〜6)

食事・排泄・移動・行動など、どれくらいの支援が必要かを数値化したものが支援区分です。支援内容と利用できる量がここで決まります。

サービス等利用計画の作成

相談支援専門員とともに、利用者の希望を反映した計画を作成します。この相談員は計画相談員と呼ばれることもあります。

受給者証が発行される

利用可能なサービスの内容・支給量が記載された重要な書類です。

サービス提供事業所と契約

希望の事業所と契約し、サービスの利用がスタートします。


障害者総合支援法の特徴

障害名ではなく必要な支援を軸にする考え方

障害の重さと困りごとを中心に考えることで、より個別支援に特化することが可能になります。

本人の選択・意思決定を尊重する仕組み

エンパワメントの視点で本人が決める支援が重視されています。

医療・福祉・地域との連携を前提にした制度

訪問看護、医療機関、地域の相談拠点などの機関と連携しながら支援することが求められています。

家族のケアも重要な視点

介護者の負担増加を防ぐための仕組み(生活介護居宅介護ショートステイ重度訪問介護など)が整備されています。


制度が抱える課題と今後の展望

障害者総合支援法は充実した制度ですが、一方で課題もあります。

地域格差の広がり

自治体によってサービス量・事業所数が異なり、希望する支援が受けられないケースもあります。

支援者の不足(人材確保)

介護・福祉の現場では慢性的な人材不足が続いており、サービスの質の維持が課題です。

本人の意思決定支援が不十分な場面

本人の気持ちを聞く時間が確保できない、家族中心で決まってしまうなどの課題が残っています。

住まいの選択肢が少ない地域もある

グループホームの数が足りず、地域生活が選択できないケースが存在します。


おわりに

いかがだったでしょうか?

障害者総合支援法は、障害のある人が地域で暮らし続けるための重要な制度です。

・日常生活の支援

・社会参加や働くことの支援

・地域での暮らしを支える住まい

・家族の負担を軽減する仕組み

これらを総合的に整えているのが、この法律の大きな特徴です。

制度を正しく知ることで、必要な支援に早くつながり、安心した生活を実現できます。

この記事が、その理解の一歩としてお役に立てば幸いです。