知的障害・身体障害・精神障害とは?基礎からわかりやすく解説

はじめに

私たちの身の周りには、さまざまな障害をもつ人が暮らしています。

自閉症ダウン症、アンジェルマン症候群、脳性麻痺、発達障害、グレーゾーンなど、様々な名前を耳にしたことがあるかもしれません。

「知的障害」「身体障害」「精神障害」の違いは何か、どんな配慮が必要なのかと聞かれると、説明がむずかしいという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、それぞれの障害の特徴や背景社会的な配慮支援の考え方をわかりやすく解説します。日常生活での理解促進や支援の第一歩として、ぜひ参考にしてください。


知的障害とは? 発達の特性と生活上のつまずき

知的障害とは、

知的能力(IQ)の発達に遅れがあり、日常生活や社会生活に一定のサポートが必要となる状態を指します。

主な特徴(代表例)

・学習に時間がかかる

・読み書き、計算が苦手な場合がある

・新しい環境が苦手で、慣れるまでサポートが必要

・抽象的な言葉や比喩表現が理解しにくい(ノンバーバルコミュニケーションの記事参照)

・予定の変更が苦手で、見通しがあると安心しやすい(自閉症ダウン症の記事参照)

原因

・生まれつきの要因(染色体異常など)

出生前後の脳への影響

発達初期の疾患や事故

など、さまざまです。

日常生活での困難

・生活スキル(買い物、交通機関の利用、金銭管理)

・仕事の段取りや複数作業の同時進行

・曖昧な指示の理解

などでつまずきやすいことがあります。

周囲にできる配慮

・わかりやすい言葉で伝える

・一度に多くのことを求めない

・目で見てわかる工夫(写真・図・メモ)

・見通しを伝えて安心できる環境づくり

知的障害のある人は、環境が整うと能力を十分に発揮できます。

「できること」を土台にしてサポートすることが大切です。

※これらを支援する専門職(OT・ST)の記事はこちら


身体障害とは? 身体機能の制約から生じる困難

身体障害とは、

視覚、聴覚、肢体、内部臓器など、身体の機能が一定程度低下している状態を指します。

種類が多く、外見からわかりやすいものもあれば、見えにくいものもあります。

主な種類(身体障害者手帳の分類)

・視覚障害(見えにくい・視野が狭い)

・聴覚障害(聞こえにくい・言葉の理解が難しい)

・肢体不自由(歩行・手足の動作に制限がある)

・内部障害(心臓、腎臓、呼吸器などの機能障害)

・音声・言語・そしゃくの障害

見えやすい障害/見えにくい障害

・車椅子や白杖は「見えやすい障害」

・心臓疾患や人工肛門などは「見えにくい障害」

見えにくい障害の人は、外見では理解されず、誤解を受けやすいことがあります。

日常生活での困難

・段差や階段などの移動

・文字が読みにくい

・音が聞こえない

・体力の消耗が早い

・長時間の立ち仕事が難しい

周囲にできる配慮

・バリアフリー環境(スロープ、手すり、段差の少なさ)

・ゆっくりしたペースでのコミュニケーション 急がせない

・無理をさせない

・必要に応じて声かけをする(声をかけすぎない配慮も大事)

身体の機能に合わせた環境づくりが、本人の生活の自由度を大きく高めます。

※これらを支援する専門職(PT)の記事はこちら


精神障害とは? 心の働きの変化によって生活に影響が出る状態

精神障害とは、

心の働きや感情の調整がうまくいかず、生活や対人関係に困難が生じる状態を指します。

主な疾患の例

・うつ病

・統合失調症

・双極性障害

・パニック障害

・PTSD(心的外傷後ストレス障害)

発達障害による二次的な精神症状

精神障害=性格の問題”ではありません。

脳の働きやストレス環境が深く関わる医療的・心理的な問題です。

主な症状

・気分の落ち込み

・意欲の低下

・幻覚、妄想、極端な不安

・眠れない

・食欲がない

・感情のコントロールが難しい

・集中力の低下

症状は波があり、良い時期とつらい時期を行き来しながら回復していくのが特徴です。

周囲にできる配慮

・否定しない

・焦らせない

・「頑張れ」という言葉を避ける

・必要なときに専門機関につなぐ

・休息がとりやすい環境を整える

精神障害の支援では、本人のペースと安心感が柱になります。

自律神経ポリヴェーガル理論の解説記事も合わせて読んで頂けると理解が深まると思います。


3つの障害の「違い」と「共通点」

違い

共通点

・本人の努力不足ではない

・症状は個人差が大きい

・周囲の環境調整で生活は大きく変わる

・できないことよりできることを伸ばす視点が大切

障害の種類が違っても、周囲の理解やサポートの質が生活のしやすさを大きく左右します。


社会ができること 共生のための環境づくり

障害のある人が生きやすくなると、社会全体が豊かになります。

多様性を前提にした仕組みづくり

・バリアフリー化

・多様な働き方の実現(障害者雇用制度など)

・相談しやすい窓口の整備

差別や偏見の解消

障害理解が社会にもたらすメリット

・コミュニケーションがスムーズになる

・ビジネス、教育、地域づくりの質が向上

・誰もが暮らしやすい環境が生まれる

障害は「一部の人だけの問題」ではなく、社会全体(参照:社会モデル)で共有すべきテーマです。


おわりに 違いを知ることで、より生きやすい社会へ

知的障害・身体障害・精神障害には、それぞれ異なる特徴や支援のポイントがあります。しかし、どの障害にも共通しているのは、本人の努力不足ではなく、社会の理解や環境によって生活のしやすさが大きく変わるということです。

障害について正しく知ることは、特別な人のためだけではありません。

たとえば、困っている場面に気づけるようになる、声のかけ方が変わる、無意識の偏見に気づく、その一つひとつが、生きづらさを抱える人を支える大きな力になります。

そして、障害のある人が暮らしやすい社会は、私たち全員にとっても暮らしやすい社会です。

バリアフリー化、働き方の多様化、相談しやすい環境づくりなどの取り組みは、誰にとっても安心感につながります。

「障害を理解する」という行動そのものが、共生社会への第一歩です。

この記事が、その一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。