誤嚥性肺炎とは?原因・症状・予防を徹底解説

はじめに

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、障害のある方や高齢者(認知症含む)の健康リスクとして特に注目される疾患の一つです。

「なぜ誤嚥すると肺炎になるの?」

「むせやすくなってきたけど大丈夫?」

「家庭でできる予防方法はある?」

など、不安や疑問を抱えている人は多くいます。

この記事では、誤嚥性肺炎の仕組みから原因日常でできる予防策医療的支援のタイミングまで詳しく、そして分かりやすく解説していきます。

※摂食と嚥下についてまとめたこちらの記事も合わせて読むと理解が深まると思います。


誤嚥性肺炎とは?どんな病気なのか

誤嚥性肺炎とは、食べ物・飲み物・唾液・胃内容物などが誤って気管に入り、肺に細菌が侵入し炎症を起こすことで起こる肺炎です。

本来、飲み込むときは「気管の入口を閉じる」しくみが働きますが、障害認知症などの理由でこの反射が弱まると誤って気道へ入ってしまいます。

これを「誤嚥(ごえん)」と言い、繰り返すと肺の中で炎症が起こり肺炎につながります。

特に高齢者では、

・反射が遅くなる

・筋力が弱くなる

・唾液が飲み込みづらくなる

・口の中の細菌が増えやすい

など、嚥下(えんげ)機能が複合的に低下するため誤嚥性肺炎のリスクが上がります。


誤嚥が起こるメカニズムと主な原因

誤嚥は単に「食べるときにむせる」という現象ではありません。

身体の機能低下や生活習慣など、多くの要因が重なって生じるものです。

嚥下機能の低下

加齢(認知症含む)や障害、病気によって、

・舌の動き

・のどの締まり

・咳反射

などが弱くなると、飲み込み動作がスムーズに行えなくなります。

口腔内の細菌増加

口の中が清潔でないと、誤嚥した際に細菌が一緒に肺へ入り炎症を起こします。

実は口腔ケアの質が誤嚥性肺炎に大きく関係します。

食事姿勢の崩れ

背中が丸まった姿勢で食べると、気道食道の通り道が歪み、誤嚥のリスクが高まります。

不顕性誤嚥(むせない誤嚥)

睡眠中無意識のうちに唾液や食物を誤嚥していることがあり、これが発症の大きな原因になります。

「むせていない=誤嚥していない」ではない点が非常に重要です。

免疫力の低下

体力が落ちていると、肺に入った細菌を排除できず炎症が広がりやすくなります。


誤嚥性肺炎の代表的な症状

誤嚥性肺炎は、一般的な肺炎と似た症状が現れますが、以下のような特徴的なサインも見逃せません。

発熱(微熱〜高熱)

・強い倦怠感

・痰がからむせき(ゴロゴロ・ゼーゼー音)

・食欲低下

・脱水傾向

・顔色が悪い

・眠りがち

・食事中のむせやすさ

・水分だけでむせる

・「なんとなく元気がない」状態が続く

特に、

むせる回数が増えた

以前と比べて食事のペースが遅くなった

など、たとえ小さく見えるような変化であっても誤嚥のサインである可能性もあり、早めに対策することが重要です。


誤嚥性肺炎になりやすい人の特徴

以下に当てはまる場合、誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。

高齢者(特に75歳以上)

嚥下反射・咳反射が衰えやすい。

脳血管疾患の後遺症がある人

舌やのどの動きが不安定になりやすい。

パーキンソン病など神経・筋疾患

飲み込みのタイミングが合いにくくなる。

認知症の人

姿勢保持や食べ方のコントロールが難しい場合がある。

糖尿病・心疾患などの持病

全身の抵抗力が下がり肺炎にかかりやすい。

長期の寝たきり状態

唾液が喉にたまりやすく、不顕性誤嚥が起こりやすい。

生まれた時から心身に何らかの障害を持っている方

健常者と比べてからだの機能が十分に発達していないことで、食物や唾液を処理することが難しくなっていきやすい。


誤嚥性肺炎を予防するためにできること

誤嚥性肺炎は「完全に防ぐことができない病気」というイメージがありますが、実際は生活の中の工夫だけでも大きく発症リスクを下げることができます

以下は家庭でもすぐに取り組める予防策です。

食事姿勢を整える

正しい姿勢は、誤嚥予防の基本です。

・背筋を伸ばす

・足裏を床につける

・椅子の座面は深く座る

・顎をあげすぎない

たったこれだけでも飲み込みやすさが変わります。

口腔ケアを習慣化する

口の中が不衛生だと、誤嚥したときに肺に入る細菌量が増えてしまいます。

歯磨き

・舌の清掃

・入れ歯の除菌

・口の保湿

・唾液の分泌を促すケア(マッサージ・ガムなど)

口腔ケアを「食後と寝る前の習慣」にすると、肺炎予防に大きくつながります。

食事内容を調整する

嚥下機能が弱い人には、食事を以下のように工夫すると安全性が高まります。

・とろみをつける

・刻み食や軟菜食に変更する

・嚥下困難がある場合はムース食の検討

・一口量を減らす

むせが増えた場合は、無理に固形物を食べさせず、必ず専門職と相談しましょう。

飲み込みを改善する体操

嚥下は筋肉の動きで行われるため、体操によって改善することがあります。

・パタカラ体操

・あいうべ体操

・首や肩のストレッチ

・深呼吸の練習

・軽い有酸素運動

これらは食前に行うと特に効果的です。

就寝前のケアで「夜間誤嚥」を防ぐ

不顕性誤嚥の多くは夜間に起こると言われています。

・寝る前の丁寧な口腔ケア

・頭を高めにして寝る

・背中を少し起こした体勢で休む

小さな工夫でも肺炎予防に効果があります。

水分補給をこまめに行う

脱水状態になると唾液が粘つき、飲み込みがより難しくなります。

少量ずつでもこまめに水分を取りましょう。


専門職によるサポートが必要なタイミング

次のような変化が見られる場合、医療機関や専門職(言語聴覚士・歯科医師)への相談が必要です。

・以前よりむせる回数が増えた

・食べ物を口に残すようになった

・食欲が落ちてきた

・体重が減ってきた

・なんとなく元気がない

・夜間にゼーゼー音がする

・体調を崩すことが増えた

専門的な検査には、

嚥下造影検査(VF)

嚥下内視鏡検査(VE)

などがあります。

安全に食べられる方法を明確にするためにも、早期受診が大切です。


おわりに

いかがだったでしょうか?

誤嚥性肺炎は、障害や高齢者(認知症含む)だけでなく、体の機能が弱っている人なら誰にでも起こりうる身近な病気です。

しかし、日々の小さな工夫や周囲の気づきによって、発症のリスクは大きく下げることができます。

食事の姿勢や口腔ケア飲み込みやすさへの配慮などは、どれも特別な道具が必要なわけではなく、家庭でもすぐに取り入れられる対策です。

また、むせる回数が増えたり、食欲が落ちたりといったいつもと違うサインに早く気づくことも、健康を守るための重要なポイントになります。

誤嚥性肺炎の理解が深まることで、大切な家族の体調変化に気づきやすくなり、安心して食事を楽しめる時間を増やすことにもつながります。

今日からできる範囲で少しずつ、できることを取り入れてみてください。

読んでくださり、ありがとうございました。

この記事が皆さまの生活や支援の一助となれば幸いです。