延命治療とは? 知っておきたい基礎知識と後悔しないための考え方

この記事では、延命治療とは何かをわかりやすく解説します。メリット・デメリット、終末期医療との違い、家族や本人が後悔しないための考え方、体験談を紹介します。


はじめに

高齢化が進む日本では、病気の治療だけでなく最期をどう迎えるかが大切なテーマになっています。

特に延命治療は、突然選択を迫られることが多く、家族が迷ったまま判断してしまうケースも少なくありません。

「延命治療ってそもそも何?」

「どんな場合に行われるの?」

「やった方がいいの?それともやらない方がいいの?」

この記事では、延命治療の仕組みと選択のポイントをわかりやすく詳しく解説します。

※厚生労働省より出されている「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」も合わせて読むと理解が深まると思います。


延命治療とは? 意味と基本的な考え方をわかりやすく解説

延命治療とは、病気の治療が難しくなったり、回復が見込めない状態になったりしたときに、人工的な手段を用いて命をできるだけ長く保つ医療行為です。

延命治療の目的は、

「病気を治すこと」ではなく、

生命を維持すること」です。

つまり、身体の機能が弱くなっても、医療の力でその働きを補おうとすることが延命治療にあたります。


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延命治療が必要となる背景

延命治療が選択肢にあがるときは、次のような状況が多いです。

回復の見込みが低い病気の末期

・がんの終末期

・進行した認知症

・多臓器不全

急激に容体が悪化したとき

・心筋梗塞や脳卒中

・重篤な感染症

意識が戻らない状態が続くとき

・重度の脳損傷

・植物状態が長期間続くケース

超高齢による体力低下

身体の回復力が弱まっていると、治療より維持を中心にした医療が必要になることがあります。

いずれも「病状を治す医療」から「生活の質を保ちながら命を維持する医療」へ目的が変わってくる場面です。


延命治療の種類

人工呼吸器

呼吸が弱ったときに機械で空気を送り込む装置。

肺炎・筋力低下・意識障害などで使われます。

メリット:呼吸が維持できる、命をつなげる

デメリット:苦痛を伴うことがある、外せなくなる場合がある

心肺蘇生

心臓が止まった際に胸骨圧迫・AED・薬剤投与を行い、心拍を戻す医療。

一般的に高齢の方や重度の病気の方に行うと、重大な後遺症が残ることが多い 病院では「蘇生処置をしないという意思」を選択する人も増えている

点滴・経管栄養(胃ろう・鼻腔チューブ)

食事を取れなくなった時に栄養と水分を提供する方法。

メリット:栄養を確保できる

デメリット:苦痛や違和感がある、誤嚥のリスクがある

血液透析

腎臓の代わりに血液をきれいにする治療。

体力が必要で、終末期には負担が大きい場合があります。

昇圧剤・点滴

血圧を上げたり、脱水を補ったりするための薬剤。

重症時には点滴量が増え、本人の負担が大きくなる場合があります。


延命治療のメリット

命が助かる可能性がある

治療を行うことで、回復のチャンスが得られる場合があります。

家族が心の準備をする時間が持てる

突然の別れとならず、家族に心の整理をする時間が生まれます。

病状によっては回復し、自分らしい生活に戻れるケースもある

脳卒中や感染症など、治療で改善する可能性がある場合に効果的です。


延命治療のデメリット

身体的な苦痛が大きい場合がある

人工呼吸器や点滴が痛みや不快感を伴うことがあります。

根本的な回復にはつながらない場合が多い

延命治療は治すための医療ではないため、後遺症や寝たきり状態が続く可能性があります。

最期の時間を本人らしく過ごしにくくなる

家族と会話ができない、医療機器に囲まれるなど、穏やかさが損なわれるケースもあります。

家族の精神的・経済的負担が増える場合がある

長期入院や医療費がかさむこともあります。


延命治療を選ぶか迷ったときの判断ポイント

本人の意思はどうか

生前に「延命治療を望まない」と言っていた場合は最優先すべきです。

痛みや苦痛はどれくらいか

治療によって苦しみが増えるなら、医療者と十分に相談する必要があります。

回復の可能性はあるか

完全に回復するのか、部分的に回復するのか、回復の見込みがないのか。

生活の質(QOL)が保てるか

命を延ばすだけでなく、「どう生きるか」も大切な視点です。


延命治療と終末期医療・緩和ケアの違い

延命治療

→ 医療の力で生命をできるだけ長く維持する。

終末期医療(緩和ケア)

→ 痛みや苦しみの軽減を重視し、残された時間を穏やかに過ごすことを目的とする。

多くの人が混同しやすいですが、目的は全く違います。


よくある延命治療の誤解と現実

「延命治療をしない=見捨てる」ではない

延命治療を行わない選択でも、痛みを取り除く緩和ケアはしっかり行われます。

「延命治療をすれば必ず元気になる」わけではない

治療後に後遺症が残り、以前の生活に戻れないケースも多いです。

「延命治療は絶対に必要」でもない

医師と相談したうえで、本人や家族の価値観を尊重する選択が重要です。


ACP(人生会議)とは? 後悔しないために大切なこと

ACPとは、

Advance Care Planning(アドバンス・ケア・プランニング)の略で、

「もしものときのために、治療やケアの希望を話し合っておく取り組み」です。

ACPで話す内容の例

・延命治療を望むか、望まないか

・苦痛緩和をどこまで希望するか

・どこで最期を迎えたいか(自宅/病院/施設)

・判断能力がなくなった場合、誰に意思決定を託すか

人生会議は一度だけでなく、人生の節々で見直していくことが大切です。

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延命治療に対して家族としてどう向き合うか

本人の価値観を中心に考える

「本人ならどうされたいか」を軸にすることが重要です。

医療者の意見も聞きながら焦らずに判断

医師・看護師・ソーシャルワーカーは多くのケースを見てきた専門家です。

家族同士の気持ちを尊重する

介護や医療の選択は、家族間で意見が分かれやすいテーマです。

どんな選択をしても“間違いではない”

後悔しないために必要なのは、選択の正しさではなく「話し合ったプロセス」です。


延命治療の相談で多いケース

「人工呼吸器をつけるべきか迷っている」

→ 回復の可能性、苦痛、意思表示の有無をもとに家族で話し合うことが大切。

「胃ろうをつけるべきかどうか」

→ 快適に過ごせるか、誤嚥リスクを減らせるか、本人の生活の質を考える。

「CPR(心肺蘇生)はどうするべきか」

→ 高齢者の場合、強い圧迫で骨折や後遺症の可能性が高いことも説明される。


最後に選択を尊重することが大切

延命治療を選ぶことも、選ばないことも、本人の尊厳と家族の想いを尊重した大切な選択です。

どちらを選んでも「正解・不正解」はありません。

大切なのは、誰もが納得できる形で決断することです。


体験談

入院している身内が手術を受ける際に延命治療に関わる判断をしなくてはならない場面がありました。今回は一例としてその時のことをご紹介させて頂きたいと思います。

病院側から求められたのは、身内が入院中、特に術中術後に心肺停止が起きた際、患者に心臓マッサージ・電気ショック・人工呼吸・昇圧剤投与(血圧を上げる為の薬)を行うかどうか、つまりは緊急の延命措置をするかしないかの意思確認でした。

医師が「あくまで個人的見解ですが」という前置きをした上で、「かなり高齢の場合はそれらの延命処置・治療は本人にとって辛い治療になるので、そこで延命治療が出来たとしても、離脱(呼吸器を外す事が出来るか、昇圧剤を止める事が出来るかなど)の問題も生じてくる」といった旨のお話しがありました。

その判断を家族や親族間で行わなければならないのでとても慎重に進めなくてはなりません。

では次に、これらの判断をする際に念頭に置いておきたいことをお話しさせて頂きたいと思います。

今回のような状況になった場合、本人の意思決定を経ないことで、過度な延命治療(呼吸器、気管切開、胃ろう、ストーマなど)を施した際に、かえって本人の尊厳を損なってしまう可能性も考えられます。

本人だったら

・どのように生きたいのか

・どのように終えたいのか

家族などの周囲の人がどう考えるかではなく、あくまで「本人だったら何を望むだろうか」という本人主語の視点が必要になってきます。

本人が人生の積み重ねの中で築き上げてきた価値観や考え方、関係性、宗教観、理想像などがあると思いますので、特に自立心(自律心)が強い方の場合は、様々な処置が施されることで、これまでとこれから、そして今の自分の自尊心を傷つけてしまい、悲しく望まない結果に繋がることもあります。

延命治療を本人自身が望んでいると意思確認できたり、延命治療後のビジョン(人生設計)があったりする場合は、積極的に取り入れると良いと思います。しかし、そうでない場合は、より慎重に協議する必要があります。このような話し合いはACP(人生会議)と呼ばれます。

延命治療とは別に手術後の痛みや呼吸状態を緩和させる処置を施したとしても、より自然な状態(=その人らしい状態)、つまりは「延命をしない」という選択が大切になってくる場合もあります。本人含め家族間で話し合いを重ね、そのように尊厳を保ちながら最期を迎えていくことは尊厳死と言われています。

上記のことは、一人ひとりの価値観や考え方に依存するので、家族間で様々な意見があるかと思います。ですが、ACP(人生会議)の議論の視点(=主語)はどこまでいっても本人であり、本人が現在まで積み上げてきたもの、そして、仮に延命治療を行うとなった場合の価値などを鑑みて協議していく必要があると感じます。

家族ないし親族間で話し合い、「緊急の延命措置はしない」という判断を行いましたが、結果的に手術は無事に成功しその後も大きな問題なく経過をしているため、延命措置を施す場面はありませんでした。

このような選択には決して正解はなく、一人ひとりの価値観や想いは異なるので、家族や親族間での意見もバラバラで、多くの場合は中々まとまらないのではないかと思います。それらが理由で言い争うこともあるかもしれません。

ですが最終的に、延命措置をするのかしないのかのどちらかを決めなければいけないため、もどかしく、家族間の意見で板挟みになり、葛藤すると思います。

今回は、読者自身や知り合いがそのような選択をする立場になった時、少しでも「本人の尊厳を保てるのか」といった本人主語の視点を踏まえながら考えていくことが大切だと感じたので、私自身のエピソードをお話しさせて頂きました。

おすすめの本

『はじめて出会う生命倫理』

学生時代、初めて生命倫理を学ぶ際に読んだ本です。入門編なので初めての方でも読みやすい内容になっていると思います。Amazonに本が出ています。詳しくはこちら


『障害学への招待—社会、文化、ディスアビリティ』

学生時代、卒業論文を書く際に参考にさせて頂いた本『障害学への招待—社会、文化、ディスアビリティ』(著:石川准、長瀬修)をご紹介したいと思います。障害、権利、優生思想、生命倫理的な考え方などの概念が体系的に網羅されているので、より深めて学びたいという方は参考になると思います。Amazonに本が出ています。詳しくはこちら

目次

第1章 障害学に向けて
第2章 障害、テクノロジー、アイデンティティ
第3章 自己決定する自立―なにより、でないが、とても、大切なもの
第4章 「障害」と出生前診断
第5章 優生思想の系譜
第6章 ろう文化と障害、障害者
第7章 聾教育における「障害」の構築
第8章 異形のパラドックス―青い芝・ドッグレッグス・劇団態変
第9章 歴史は創られる
第10章 障害学から見た精神障害―精神障害の社会学


『しあわせの王様 全身麻痺のALSを生きる舩後靖彦の挑戦』

参議院議員、れいわ新選組、全身麻痺で人工呼吸器装着の筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 患者、全身麻痺ギタリストとして全国的に知られている舩後靖彦(ふなごやすひこ)氏。舩後さんがまだ政界に出る前のことですが、私が大学時代、舩後さんと直接、意思伝達装置「伝の心」やメールなどを通じてお話しさせて頂く機会があり、大変お世話になりました。その際に読んだ本『しあわせの王様 全身麻痺のALSを生きる舩後靖彦の挑戦』をご紹介したいと思います。舩後さんの生い立ちから現在、人工呼吸器装着の決断、なぜ強く歩み続けることができているのかが伝わると思います。Amazonに本が出ています。詳しくはこちら


『笑顔のメッセンジャー 私が私でいられるしあわせ』

1986年、横浜市に日本で初めての重症心身障害児者の通所施設「朋(とも)」が開設されたことは全国的に知られていますが、その立ち上げ人の一人、日浦美智江氏が書いた本『笑顔のメッセンジャー 私が私でいられるしあわせ』をご紹介したいと思います。現在では、障害者総合支援法に基づいて「障害者支援施設」と呼ばれることが一般的になりましたが、当時は国の制度自体がまだ存在していない時代で、「精神薄弱者更生施設」という名前を使ってはじめて施設を作る認可がおりたそうです。「朋(とも)」の成り立ちから、そこの込められた様々な方々の切なる想いまでが載っていますので、ぜひ読んでみて頂きたいです。Amazonに本が出ています。詳しくはこちら


優生学と人間社会

優生思想を学ぶ際に参考にさせて頂いた本です。ナチス、遺伝子研究についても触れられています。Amazonにも本が出ています。詳しくはこちら


おわりに

延命治療は、医学的にも心理的にも複雑なテーマですが、正しい知識を持つことで、いざというときに後悔しない判断につながります。

家族・医療者と話し合いながら、

どのように生きたいか

どのように最期を迎えたいか

を共有しておくことが、本人と家族の安心につながります。

延命治療は、命を守るための医療であると同時に、生き方を考えるきっかけでもあります。


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