セルフケアとラインケアとは?|免疫力を高める個人ケアと職場での支援方法を解説

セルフケアとラインケアの違いをわかりやすく解説。免疫力低下を防ぐ個人のセルフケアと、職場・チームで行うラインケアの具体例を福祉・対人援助職の視点で紹介します。

はじめに

医療や介護、保育などの人との距離感が近い対人援助の現場では、体調管理を常に念頭に置いておかなければなりません。

職員一人ひとりが自分自身の健康を守り、免疫力を維持していくことが、利用者さんへの安心・安全な支援につながります。

今回は私の経験をもとに、ご自身で取り入れやすいお勧めのセルフケアと、チームや組織としてできるラインケアを紹介したいと思います。


おすすめのセルフケアとは?|免疫力を高める日常でできる具体的な方法

まず、セルフケアとは、自分自身の心身の健康を自ら守り、回復するための行動や意識のことです。「自分を大切にすること」が基本にあります。

セルフケアは「一人で頑張る」ことではなく、周囲の支援を上手に活用する力も含みます。

今回は、セルフケアを早期長期に分けてお話ししていきたいと思います。

体調異変時の早期セルフケア

まず、身体に違和感を感じたら迅速に対処することが早期回復の秘訣です。長引かせるほどに本格的に体調は悪化していくと捉えて良いでしょう。

咳やくしゃみ、喉の違和感、寒気(悪寒)、倦怠感、発熱の初期、末端の冷えなど、普段はないような身体の状態の変化を感じたら、迅速に対処することがとても大切です。なぜなら、異変を放っておくほど免疫力は加速的に低下し、その後に本格的な風邪など体調が悪化していく場合が多いためです。ですので、日常から身体にアンテナを張っておくことが大切です。

次に、違和感を感じた際の具体的な早期の対処法をご紹介したいと思います。

体力消費は回復に集中させる

仕事をしている最中であれば、可能な限り休んだり、早退したりといった調整がとても重要になってきます。

一方、対人援助という仕事柄、「今現場から抜けてしまうわけにはいかない」と責任を感じてしまうことも多いかもしれません。

ですが、早い段階で現場から離れた方が感染拡大を未然に防ぎ、ご自身も早期に回復させて現場に復帰できる可能性が高まり、全体的に見ればかえって良い結果に繋がります。

体温を上げる(早期編)

※原則は身体を冷やさないことです。

・厚着する

・温かい飲み物を飲む。

→これは私自身が行なっているお勧めのやり方ですが、白湯、生姜、ねぎ、ほんの少しのアルコールなど、身体の内側から体温を上げられるものを摂るようにすると身体がポカポカして、何もしない場合よりも回復が早まっていく体感があります。

・入浴する

→体温を上げる方法として入浴がありますが、急性期は体力が落ちているため、入浴やシャワーを浴びるかどうかに関しては適宜判断が必要です。というのも、入浴することに体力を使ってしまい、肝心の回復が後回しになってしまう可能性があります。また、入浴後に身体が冷える状況がかえって体調の悪化に繋がる場合もあります。


日頃から出来る長期セルフケア

前の章では、早期のセルフケアについてお話ししましたが、そもそも体調を崩さないよう日頃から身体を整えていくことも大切です。

体温を上げる(長期編)

日頃から基礎体温を上げておくということは免疫力を高めることに繋がります。反対に、低体温ということは免疫力が低く、風邪やその他の感染症などに罹りやすくなる可能性が高まります。

入浴やシャワー浴

→入浴やシャワー浴は身体の垢を取るという目的もありますが、それ以上に体温を上げる機会でもあります。

身体を冷やさない食事

→お腹を冷やすような冷たい飲み物やアイスクリームなどはあまり摂りすぎないようにすることも大切です。

代謝を上げる適度な運動

→スポーツやランニング、ウォーキングなどの適度な運動をすることで、身体が燃焼し、代謝が上がる働きがあります。こちらはダイエットというよりも基礎代謝を上げることが目的です。

バランスの良い食事

・タンパク質、野菜、発酵食品を意識

→タンパク質(肉・魚・卵・豆類)、野菜、発酵食品を意識して摂ることで、活動の土台となる身体の組織(筋肉や骨)を作ることができます。

・活動のエネルギー源となる炭水化物を適度に摂る

炭水化物にはが入っており脳を動かすエネルギー源となります。炭水化物は車でいうガソリンで、その他の栄養素はエンジンオイルのようなものです。ダイエットなどで食事を減らすことも注意が必要です。食事を減らしたから良いというものでもなく、身体に必要な栄養素が不足し、身体が弱ることに繋がる場合もあります。炭水化物は活動する際に早期的に必要な栄養素であり、長期的な身体作りとしては捉えない方が良いかと思います。日頃から炭水化物を摂り過ぎると肥満などの生活習慣病に繋がるリスクもありますので適度な量が望ましいです。

・甘い物や加工食品の摂りすぎに注意

添加物が多く含まれる食事や過度な量の食事を日常から摂っていると、それを分解するために身体のエネルギーを多く消費します。摂取したものを分解することに身体のエネルギーを集中させるのではなく、「バランスの良い身体を作るために食事を摂る」といった視点が大切です。

・サプリメントなどを摂取

→食事だけでは十分に補えない亜鉛ビタミンなどの栄養素はサプリメントを摂取することで補うことも良いです。しかし、サプリメントに頼りすぎるのも注意が必要です。あくまで、普段の食事ではどうしても不足してしまう栄養素を摂るといった視点が大切です。

十分な睡眠

・寝溜めをせず、普段から適度な睡眠を心がけましょう。一時的に身体を回復させるのではなく、日頃から体調管理を行い、身体の土台を作っておくことが望ましいです。

・シフト勤務でも規則正しい睡眠リズムを意識

・寝る前のスマホいじりカフェインの摂取など、交感神経を刺激するものはなるべく避けるようにしましょう。

自己メンテナンス

・趣味や家族との時間などリフレッシュ法を持つ

仕事プライベートを明確に切り分けることも大切です。仕事のパフォーマンスを上げるために、また仕事への想いが強いがために、四六時中仕事のことを考えているのが良いかというと、そういう訳でもありません。メリハリのない働き方は思わぬところで周りの人達に影響を与えてしまいます。部下や後輩はその様子を見て「私もここまでしなければならないのか…」と萎縮してしまったり、上司によっては「業務時間内では仕事を完了できないのだな」と映ってしまうこともあります。また、仕事のパフォーマンスを長期的に維持していくためには、バーンアウト(燃え尽き症候群)を起こさないような安定した働き方を見出していくことが大切です。

「最近疲れている」「イライラが増えた」など自分の心の変化を振り返る

→こちらは以前書いた「アンガーマネジメント」の記事が参考になるかと思いますのでぜひ参考までに読んで頂けたらと思います。

・整体、整骨院、マッサージなどのサービスを利用する

→日々、現場で仕事をしていると少なからず身体に負荷がかかってきます。腰痛など身体が故障してからかかるのではなく、そうならないために日頃からメンテナンスをしていく視点も大切だと感じます。

・手洗いやうがいの習慣化

→人との距離感が近い対人援助職は、少なからず感染症のリスクがついてまわります。そのため、感染症を少しでも防いでいくために手洗いうがいの取り組みは大切となっていきます。これは日頃、誰かが監視して促すようなものではないため、ご自身で自律的に行っていく姿勢が大切です。


チームで促すラインケアとは?|職場で免疫力と心身の健康を支える関わり方

ラインケアとは、「職場のライン(指揮命令系統)」によるケア、という意味があります。上司やリーダーなどの管理職が部下の心身の健康に配慮したり、チーム全体でケアが出来る空気感を作ったりすることを指します。

ラインケアの基本は「信頼関係」であり、これは一方的に指導するのではなく、聴く姿勢寄り添いが大切です。話す仕事以上に、聞く仕事とも言えるでしょう。

・観察と声かけ

→部下や同僚など日々仕事をする仲間の表情や発言、行動の変化に気づいたら(遅刻が増える、元気がないなど)、「最近どう?」など自然な会話で状態を把握するようにします。

・業務の調整や面談

→必要に応じて業務量や勤務時間を調整することも必要でしょう。面談に関しては、良好な関係性が築かれている立場同士で実施するのが良いです。しかし、「面談」と聞くと、「自分は何かまずいことをしてしまったのではないか?」と萎縮してしまい、本音を話せなくなる人もいます。そのため、話し合いの仕方に関しては、その人の状況や心情に十分配慮した上で行うことが望ましいです。

・専門相談に繋げる

→必要があれば産業医や外部相談窓口、また、問題が生じた際はハラスメント窓口などに繋げる選択肢を設けることも大切です。年齢や性別、価値観など様々な人がいる組織においては、時に、組織内で問題を解決することが困難な状況も起こり得ます。そのため、相談を専門とした窓口を設けることも大切です。

・職場の環境作り

仕事の三本柱の一つに「人間関係」がありますが、職場において、意見を言いやすい雰囲気や相談しやすい環境を作ることはとても大切です。そのような空気感を現場で働く人達が意識的に自律的に作っていくことが重要ですが、それに加えて、立場上、業務内で決定権の強い影響力のあるリーダー管理職は、現場に委ねるだけではなく共にそれらの空気感を作っていくことが望ましいでしょう。


おわりに|セルフケアとラインケアを日常生活や仕事に活かすために

いかがだったでしょうか?

私たちが日々関わる対人援助の現場は、「人と向き合う仕事」であり、同時に「自分自身とも向き合う仕事」でもあります。

どれだけ専門知識や技術を磨いても、心身の健康が崩れてしまえば、その力を十分に発揮することはできません。だからこそ、「自分の身体と心の声を聴くこと」「仲間の小さな変化に気づくこと」は、支援の現場における大切な力だと感じます。

セルフケアは、自分を大切に扱うことから始まります。そして、ラインケアは、互いを大切にし合う職場文化を育てることです。

この2つが両輪のように回ることで、チーム全体の免疫力、つまり「組織としての健康力」も高まっていきます。

体調を崩してから気づくのではなく、日頃から「予防」と「気づき」を意識すること。

そして、無理をしすぎず、頼り合える関係性を育てていくこと。

その積み重ねこそが、利用者さんへの安心・安全な支援を守り続ける力になるのではないでしょうか。

今日からできる小さなケアを一歩ずつ積み重ねながら、チーム全体で「健康に働ける環境づくり」を進めていきましょう。


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